魚の感想

twitterの外付けの感想置き場として使っています。

思想汚染される前に書いた「君たちはどう生きるか」の感想

宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を見ましたでしょうか? 僕は見ました。

公開まで一切情報を出さないというプロモーション方法のせいもあって、公開当初の世の中はネタバレ厳禁みたいな空気感になっていたけれど、少し経つと評論記事や考察ブログなんかがどんどん出てきて、最近は雑誌で特集が組まれたりもしていて、だんだんオープンになってきた気がします。

 

なので僕も「そろそろいいかな……」という感じで、映画を見た当日に書き殴った感想をネットの海に放流したいと思います。

なにせこのブログのタイトル……「魚の感想」だから。ちゃんとたまには感想ブログを書かなきゃね。

 

というわけで、以下に「君たちはどう生きるか」の感想を載せていくんですが、作品の考察や描写の比喩を言い当てるかっこいい感想にはなっておりません。

この感想は、公開後に出てくる解説記事とか宮崎駿研究者のガチ考察を読んで自分の印象が汚染される前に書いておかねば……という予感があって、急いで書いたものです。

実際、最近の僕はガチの人たちの渾身の考察記事に触れてしまって思想汚染が働いたため、もう「君たちはどう生きるか」を他人の思考なしに自分の感性だけで見ることはできなくなったでしょう。そういうことってあるよね。

 

ちょっと長くなりましたが本当に以下から感想始まります。もちろんネタバレがあるので、注意してください。

 

ネタバレあるよ〜〜〜〜

 

 

 

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君たちはどう生きるか」を見て困った。どう評価していいのか分からない。

評価……? 評価する前提で見るからよくないのだろうか? もっと純粋に、思ったままに書けばいいのかもしれない。

でもこのインターネット社会で評価を大いに含んだ感想を書くことは、一つの参政権のようになっているような気がする。やらなきゃ軽んじられる……みたいな。

 

思ったままを書くならば、映像の迫力や質感というものはとても見応えがあった。

でも、話のプロットとか大丈夫かこれ? 突飛すぎないか? という感じで、宮崎駿じゃなかったらボロクソに言われているんじゃないかと思わざるを得ない。展開が間延びしているのだ。

 

ストーリーは最終的には落ちるような感じがある、しかし多少無理やり持っていった感も否めない。色々と謎が残るのだ(おばあちゃん達の人形とか、お母さんがすんなり現実に戻ったりとか……本当のお母さんの願いが通じた結果?)。

 

小説の「君たちはどう生きるか」が劇中に登場する。

僕は、原作小説については読んでおいた方がいいと思った。読んでおくと真人(まひと)の行動原理が分かる気がするし、作品全体で言いたいことを10%増しで理解できるような気がする。

だが、理解できるとしても10%程度なので、やっぱり別に読まなくてもいいかもしれない(どっちだよ)。

 

そもそも作品のテーマという話(宮崎駿の言いたいことという話)になってくると、もう僕らのような一般の人達には出る幕は無く、重度のオタクやプロの評論家の仕事になってくるので、そういう意味でも、わざわざ原作を読んでその深い領域に踏み込んでいかなくてもいい気がする。

だが、原作を読まずに真人の行動原理が理解できるものなのだろうか?

真人が自分で頭を傷付けて、それを義理の母親が責任に感じ、塔に入っていく。真人は小説を読むまでその罪を自分の中で正当化しているので、義理の母には冷たい。だが、実の母の残した「君たちはどう生きるか」で自分の過ちを見つめ直して、義理の母親を助けに行く……。

そういう行動原理があるという風に僕は考えたのだが、これは小説の内容を知らないと多分たどり着けない。

 

おそらく小説の内容を知らない人達は、実の母親の愛情に触れたことで、真人が本来の優しさを発揮して助けに行ったという文脈で受け取るのではないか?

もちろん真人は元々優しいはずなので、その文脈でも問題はないのだが、ところどころで言動がよく分からないことになるような気がする。

「これが僕の悪意です」と言って頭の傷を示すくだりは、自分の罪を認知していることを示しているはずなのに、小説の内容を知らないとよく分からないのではないだろうか? 火に染まる世界に戻る決断も、小説の中で語られる、人の歴史の壮大さや素晴らしさ、友情の大切さが無ければ、なんでわざわざ現代に戻ろうとしているのか理解できなくなってしまうような気がする。

だから理解の助けのために、やっぱり読んでおいた方がいいのかもしれない?

 

しかし、映画のストーリー自体は本当に原作と関係ないので、ストーリーだけを追っていくなら原作不要なのである。そのことが、言ってしまえばマジでタチが悪い。

 

などと、つらつらと書いているが、上に述べたことが全然間違っているという可能性も全然ある。

上の文章を読んで「あなたはまだ巨匠の作品に対する知識と感性が足りていませんねぇ」などと言われてしまったりするかもしれない。

そういうマウント合戦への殴り込みはしたくない。だからここに書いている。

 

何度か見ると、この作品は愛着が湧くのかもしれない。時系列で整理しながら見ていくと結構面白いかもしれない。ジャンルがSFファンタジーだからだ。

風立ちぬと、ポニョと、千と千尋を足して割らなかった。みたいな作品だと思う。色々と説明不足だし、どこでも話がフワフワしている。

一体どこを楽しんだらいいのかよく分からないから「やっぱり宮崎駿の世界観はすげぇや!」みたいな感想が出てきてしまいがちになってしまうのだけれども、それはつまり宮崎駿じゃなかったらどう思うんだろうと思ってしまう。

 

結局パヤオは「君たちはどう生きるか」を読んでこの作品を作ったのか、何か別に言いたいことがあって小説を利用したのか、謎だ。もう何も考えたくない。あとはお前らだけで勝手にやってくれ。

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