仕事納め直前に風邪を引いて奇跡の12連休を作り出してしまいました。
でも年末年始休みに仕事しないといけない……。
あぁ、仕事したくないなぁ……一旦年末っぽいブログを書くか……
というわけで去年に引き続いて今年も読んだ本のマイベストテンを発表していきたいと思います。
去年は長文になっちゃったので、今年は軽く紹介していこうかな。
なお、去年と同じく、さっさと1位を教えろよという人のために1位から紹介していきます。

新潮文庫から今年出た、カフカ断片集を1位に設定。
ベストテンをどういう基準で選ぼうかなぁとなった時に、面白さとか、満足感とか、新しい発見のような、自分主体的な(?)評価の他にも、人にオススメしたいかという点も踏まえることにしました。
人にオススメする時に大事なことが読みやすさや、手に入りやすさや、サイズの小ささも大事だと思うんですが、このカフカ断片集は人にオススメしやすい要素が強いんですよね。
カフカって短編であってもストーリーの着地点が見えないので読みにくい、ガツガツ読めるような作家じゃないんですが、これは断片集なので一つ一つがめっちゃ短い(たまにちょっとだけ長いのもある)ため、ちょっと読んで辛くなったらすぐに休憩できるんですよ。
それに本自体の分量も多くないし、1日あれば読み終えることができると思います。
今年出たから本屋さんにも置いてあるし、新潮文庫だから安い。
文庫本だから邪魔にならないし薄い。
「断片集」という名前が付いていますが、詩集みたいなものなので、最初のページから順番に読む必要も無いし、全部読む必要も無い。
気が向いた時にパラパラめくって、その時目についた文章を楽しむだけでもカフカは楽しいです。
そもそもカフカ自身が断片を読んで欲しくなかったらしいので、積読しても罪悪感が無いですね。
個人的には、カフカの断片を読める方法というのが限られているというのを聞いていたので、新潮文庫から出た時に、買うしかない! となりまして買って満足してしまいました(笑)
というのも少し前に同じく新潮文庫から「カフカ短編集」が出ていて、そっちを読み終えてから読もうと思っていたんですが、結局短編集の方を読まずコッチを読んで「めっちゃいい!」って今言っているという。
2位 各務原・名古屋・国立

2024年、小島信夫にハマり出しました。
そのきっかけになった1冊です。
これヤバいです。正直全然オススメしません。
これ2,300円(税別)するんですよ、高くない? 海外文庫かよ。
内容は、作者が各務原と名古屋と国立で行った講演の原稿の合間に、家族の話を入れたり、有名な作家の評伝を入ってくるという、小説と読んで良いのか分からない内容です。
小説として面白いかどうかで読むと全く面白くないのですが、どうもこの小島信夫という作家は文章がめちゃくちゃ上手いみたいで、たま〜に物凄く情緒にブッ刺さる文章が出てくるんです。
夕暮れ時に近所を散歩してたらカレーの匂いがちょっとして幸せ。みたいな文章を書いてくるんです。
そこの文章の部分だけ切り出しても、ただのカレーの匂いなので、良い文章には違いないんですけど最初の感動は消えているというか、文章の連続の中で出会う必要があるというか、そういう下準備が必要な感動なんです。
だから、内容はつまらないけど一瞬の感動のためにちゃんと読んでしまい、内容は無いので忘れる。という厄介な作品です。
もしも読むのであれば解説から読んで欲しいです。この本の中で一番面白い(分かりやすい)のは解説です。
僕は小島信夫にハマってしまったので、本屋で探しているのですが、小島信夫作品が結構本屋に無くって、「アメリカン・ハイスクール」とか「私の作家評伝」くらいしか置いてないんですよね……だから古本屋に行って小島信夫を見つけると条件反射的に買うようにしているのですが、そんな調子で買った単行本が4冊積読になっています……助けて……

↑積読している小島信夫

今年の出版業界の事件と言われている「百年の孤独」の文庫版を僕も書いまして、読みました。
普通に面白かった。
同じ名前の登場人物がいっぱい出てきて訳がわからなくなるというのを聞いていたので、読み切ること自体が不安だったのですが、本当に同じ名前の人がいっぱい出てきた時に、全部把握するのは諦めて、とりあえずノリで読んでいったら意外とスルスル読めた、という感じでした。
小島信夫と似たことを書くんですが、ガルシア・マルケスも多分めっちゃ文章が上手いんだろうなというのをすごく感じて、よく聞くマジックリアリズムの手法も、なめらかにスルッと上手に書かれているから引っかからないのかなと……いや、ハァッ⁉︎ ってなることはなるんですが……明らかにおかしい描写以外は、そういうものなのか? くらいで誤魔化されそうになるんですよね。
それに文章が詩的で読んでで面白いです。ボリュームが多いけど読める日はどんどん読める感じ。
逆に読めない日は全然読めないので、今日じゃないな〜と思ったら焦らず辞めてました。そんな感じなので内容を忘れちゃうんですが、全部把握しようと思っていなかったのであまり気にせず読めました。
「百年の孤独」を読むために人物相関図を作りました! みたいなツイートもありましたが、それはそれで大変すぎるので、僕はとりあえず1回読み切る目的ならば毎回忘れるくらいの気持ちで読んでもいいんじゃないかなって思います。

水俣病なので、テーマが重いんですが、石牟礼道子の言葉がうますぎて引いてしまうくらいの綺麗な言葉がたくさんあるんですね。
綺麗な言葉で綴られる悲惨な水俣病の描写で悲壮感が凄まじいことになっちゃっています。
単純なルポルタージュじゃなくて幻想文学でもあることに注意が必要なんですけど、その描写はホント綺麗です。しかもシリアスな中にちょっとだけコミカルな描写も入れてたりして陰影があり、単純に文学としてすごい良い作品だなぁと思いました。
あと水俣病のことも色々勉強になるんですが、水俣病がシンプルにめっちゃ怖いんですよ、そんなスピードで死ぬの!? っていうくらい発症から死亡まで想像よりも短くて(0.5〜1.5ヶ月)、バリバリ漁師として肉体労働をしていた人がその短期間でベッドから起き上がれなくなって死ぬっていうのが、コロナを経験している上だと想像できて怖い。
水俣病は感染症じゃないけど、当時はそんなことも分からなかったわけで、住んでいる人たちの恐怖感はすごかっただろうと思うんですが、苦海浄土の中の住民たちはそれでも精一杯、割と明るく生きてるんですよね。
全体としては怨嗟の物語なんですけど、さっきも書いたように微妙にコミカルなところがあったり、自然の美しさとか命の尊厳を描いたりとか、とにかくなんかすごいことになっちゃってるやん〜って感じです(語彙力死んだ)。
5位 竜の卵

すごく昔のSFで、これを手に入れるために東京の神保町まで行きました(ウソ。他の用事もあった)。
ファーストコンタクトもののSFで、ここまでやっちゃったらもう生半可な描写の地球外惑星書けねぇじゃんってレベルの詳細な舞台設定を重力670億倍の中性子星で行うから、これを読んだ後にファーストコンタクトものが物足りなくなってしまうという副作用に見舞われました。
人間側ではなく宇宙人(チーラ)の側に立って書かれているのも珍しいと思います。
ただ、歴史物として書かれているので、ページ数のほとんどが人類の歴史をチーラが高速でなぞっていく(中性子星では地球の100万倍のスピード感で時間が流れる)話に割かれていて、人類とチーラのコンタクトは本当に最後の方の数章(2割程度かな?)に限られており、異星人とのガッツリとしたファーストコンタクトものを求める人には少々期待はずれかもしれません。
ただ、最後のコンタクトの瞬間がマジでエグくて、このために俺は読んでいたんだ! という絶頂感がすごかった。
6位 一億年のテレスコープ

少し前にブログでも紹介した「一億年のテレスコープ」を6位にしました。
詳細はもう、前のブログを読んでくれって感じなんですが、「竜の卵」がガッチガチの舞台設定であることに比べると、こちらは丁度いい塩梅で、かつSF的考証も弱くなく、とってもいい感じだということだけ書いておきます。
同じ作者の「法治の獣」もいいぞ……。
7位 ウは宇宙船のウ

SFが続きますね。
初めてレイ・ブラッドベリを読んだんですが、こんな感じなんか……! という独特の文体に最初は戸惑ったものの、短編でどんどん読んでいくとだんだん慣れてハマっていく感覚でした。
アメリカンなノリのホッコリしたホームドラマみたいな話がいくつかあってそれが面白かったです。
この作品はそもそも収録されている「霧笛」を読みたいがために読み始めました。
「霧笛」はエドガー・アラン・ポーの「灯台」のオマージュらしくて、「霧笛」の古代から生き延びた恐竜という発想が後年の様々なフィクションのアイデアの源泉になったとかなんとか……そしてその中にゴジラも含まれるとかなんとか……。
なので「霧笛」は一度は読んでおかないといけないな〜と思っていた作品でした。
「竜の卵」や「一億年のテレスコープ」のようにガチガチのSF考証をしている作風ではないので、今時の流行りではないかと思いますが、“SFの叙情詩人”と呼ばれるだけあって文中からふんだんに溢れる情緒を楽しめました。
どうも今年はプロットや考証に富んだよりも情緒的な作品が好きだったみたいです。
8位 テスカトリポカ

直木賞作品をあんまり読まないのと、めっちゃ分厚いのとで、読み切れるか不安だったんですが、1週間くらいず〜っとハマって読んでました。
リアルとファンタジーの中間の危ういところをフラフラしている感じで、「百年の孤独」のようなマジックリアリズム的な要素もあるんじゃないかと個人的に思いました(逆にフィクションじゃなかったら神奈川県川崎市とメキシコが怖すぎる)。
今年読んだ本たちの中では異色なほど読みやすく、こういうスラスラとページ数を消費できる本は読んでて自尊心が気持ち良くなっていいですね。
古代アステカの知識とかもいっぱい出ていて、興味の広がりが生まれたのも良かったです。

アンリ・ルソーの本を集めようと思っています。
ただ、本屋で手に入る本は画集とかが関の山だったので、ブックオフのアプリを使ってこの評伝書を取り寄せました。
アンリ・ルソーの絵の評伝ってだいたいヘタウマ系とか、異色の画家(笑)っていう内容なんですが、この本は珍しくルソーを最初から最後まで褒めちぎっていて、そんなに褒めちぎったら逆に営業妨害じゃないか? ってくらい褒めちぎってます。
でも、言われてみると確かにそうかもな〜と思わせるところが上手で、特に、音楽的な絵画であることを説明しているところがとても腑に落ちました。
あ〜わかるかも、となった。
1冊まるまるアンリ・ルソーなので、幼少期の話とか、影響を受けている画家とか、他の本では読んだことのなかった情報とかも結構多くあって、このレベルのアンリ・ルソー評をまた手に入れたいです。
10位 『百年の孤独』を代わりに読む

「百年の孤独」を読んだので、本屋さんで隣に置かれてたこちらも読んでみました。
脱線しながら、途中で止まりながら、読んでいくということが自分の読み方と結構近くて共感できたのと、「一気に読む」ことが本の面白さのバロメーターとされがちな世の中で、すごく時間をかけて読むことの楽しさを表現されていてとても良かった。
「百年の孤独」を100%理解しながら読んだわけではなかったので、「『百年の孤独』を代わりに読む」を読みながら、あ〜そういえばそんな話あったな〜となりました(結構直前に読んでたのに数年前に読んだみたいなテンションになった)。
本の帯が保坂和志と三宅香帆で「保坂和志と三宅香帆って名前が並ぶことあるんだ!?」って勝手なイメージだけでビックリしました。
はい、という感じの2024年でした。
書いてる途中も頭痛が酷くなって、途中で寝ちゃったので、めっちゃ時間かかったしキツかった……
来年は健康に過ごしたいですね。
それではみなさん良いお年を!!