魚の感想

twitterの外付けの感想置き場として使っています。

バニーガールと怪談

私はこの盆休み、地元に帰って友達とバニーガールラウンジで飲んだ。

そこでは、バニーガールのお姉さん達が隣に座ってお酒のお世話をしてくれたり、お菓子のゴミを捨ててくれたりするのだ。

 

ところで私は人から怪談を聞くのが好きだ。怪談というほど成立していなくても構わない。

ちょっと変な話ってレベルでもいいが、それは実体験であったり、かなり親しい人の話でなければダメだ。そうでないと、リアルさというか深みみたいなものが足りないのだ。

そして、そういう話はいきなり「怖い話とかない?」と聞いてもだいたい出てこない。

なぜか人は急に体験談を求められると話せない、忘れている。こういう話を聞き出すときは話の流れというものが必要である。

 

私はまず、隣に座ったバニーガール(赤いバニースーツを着ていて、ほどよい肉付きだった。歳は20代前半だという、確かにその肌のハリは若々しかった)に、女性だとそういうことはないのかもしれないけれど、温泉に行くとかなりの確率で金玉がめちゃくちゃでかい老人がいたりする。という話をした。

女性だとちょっと分からないかもしれないけど、金玉のでかい老人を見たりすると、自分もいつか何かの病気で金玉が巨大化したりしてしまうのではないかと不安になるのだ。もちろんその老人が病気なのか、単にサイズが大きいだけの人なのかは分からないけれど、パッと見でどうしても何かの病気に見えるんだ。というようなことを言った。

するとバニーガールのお姉さんは、私もハムスターを飼っていた時があって、その時に色々調べたところだと、ハムスターの中には金玉がすごく大きくなってしまう子がいるらしい。それは病気とかではないのだけれど、飼い主はそれを見つけて慌てて動物病院へ連れていく。そして獣医から「金玉がでかいだけです」と言われるだけ、ということがままあるらしい。という面白い話をしてくれた。

私はその話を聞いて笑いつつ、お姉さんの網タイツを見ていた。ちなみにその店では5,000円で網タイツを破ることができるサービスがあったのだが、私を含めて連れの友達は誰もやりませんでした。

 

お姉さんの網タイツを見ながら、私の悪酔い状態の脳はオーバーワークで次の話題を紡ぎ出した。

それはまるで網タイツの繋ぎ目のように粗っぽく私の脳内で関連付けられた話題だった(こう書いておくとなんだか文学表現っぽいので書いておこう)。

「今は何か飼ってるの?」と私は聞いた。

 

「今はハムスターは飼ってないけど、犬1匹と猫1匹飼ってる」

「犬猫はすごいね、家賃とか高いでしょ?」

これは偏見だが、私は勝手に、こういう夜のお店で働いている人は男女問わず犬や猫を飼っていて、家賃が高かったりして困っているイメージがあった。

「いや、家賃はそんなに高くないよ、5万くらいかな」

「5万!?」

月5万円というのはペット可の物件にしては安い。

 

「それ大丈夫なの? 事故物件とかじゃなくて?」

このとき私の中では怪談系の話に持っていこうと決めていて、なんとかこのバニーガールのお姉さんから面白い話を拾えないかと画策していたのだ。

「猫がジッと部屋の一点を見つめて動かなかったりしてる?」

「あっそれめっちゃやってる! ずーっと何もないところ見てる!」

「事故物件じゃん!」私は少し大袈裟に笑ってみる。

「いや、でも! 事故物件じゃないよ! ちがうちがう、多分そういうんじゃない」

「なんかそういう話とか無いの?」

「う〜ん、いや、あるよ? でも猫と関係ない」

そう言ってお姉さんは話を始めた。私は酔いが限界近かったが、途中で相づちを打ちながら、赤のバニースーツが作り出す胸の谷間を凝視して意識を保った。

 

────────────────────────

 

ある夜、お姉さんは車を走らせていた。するといつの間にかフロントガラスが汚れている。しかも沢山汚れている。なんだ? と思ってよく見てみるとそれは人が触った跡で、沢山の手形だった。

 

お姉さんは、これは明らかにおかしいと瞬時に気付いた。自分の車のフロントガラスを触るなんてこと、彼女は絶対にしないからだ。それに、手形の中には不自然な向きの手形もあった。それは、手首の付け根を上にして付いていたのだ。たとえ不注意で触ったとしても、そんな手形にはならない。

「ひょっとしたら、子供、姪っ子かもしれないと思ったけど、姪っ子は小さいからいつも後ろのチャイルドシートに座らせて、前には座らせないようにしてるし、絶対姪っ子でもないんよ」

 

彼女のその“姪っ子”の言葉の部分にちょっと詰まりがあったので、私は実はその部分に嘘のニュアンスを感じた。具体的にいうと姪っ子じゃなくて自分の子供なのでは? と思ったりしたのだが、そういうところに触れてはいけない。本筋と関係ないし。

逆にいうと、彼女の話にはその部分以外で嘘のニュアンスを感じなかった。

 

それで彼女の言うところでは、それは恐らくその当時付き合っていた男のせいだと言う。

彼女自身も意味不明だったらしいのだが、当時の彼氏は何かに呪われていたらしい。

月に1回お坊さんがお経を上げにくるとか、枕元の壁にお札が貼ってあるとか、他にもお札が家の至る所にあったりだとか……。

「それは、何のためなの?」

と私は聞いたが、彼女は人の家のことなので分からなかったという。ただ彼女は、この人は呪われているんだろうな、と思っていたらしい。

そんな人と付き合っていた時、車に手形が付いた。だからこれは呪われた彼氏の影響であって、今住んでいる月5万円の家とは関係ない。と言うのがバニーガールのお姉さんの話であった。

お姉さんの話はなんだかどこかで聞いたことがありそうな話だが、そこには実体験の生々しさが匂っていた。

 

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「その車はどうなったの?」

「その車は怖すぎて廃車にしたし、彼氏とも色々あって別れたからもう大丈夫なんよ」

そう言いながらお姉さんはテーブルの上のお菓子のゴミとか灰皿を片付けた。お姉さんがテーブルに身を乗り出して、物をいろいろ掴むとき、脇腹からバストトップにかけてできるなだらかな赤い丘陵を横から眺めた。

「それ以外で変なことは無いの?」

「無いよ。車だけ。それで、廃車にしたし、まぁもう大丈夫かなって」

 

ここらへんのなんとも言えない絶妙なタイミングでボーイが来て、時間を告げたので、私たちは店を出ることになってしまったのだが、最後にお姉さんと

「その車って新車だったの?」

「そうだよー。マジでもったいなくない? でも新しい車ももうあるよ」

「そうなんだ。いやぁ残念だったね」

という会話をした。最後にチラッと谷間を拝んでおいた。

 

お姉さんの話は全ての要素が関連しているだろうか? 5万の賃貸物件、車、彼氏はそれぞれ独立した話のような気がするし、全部関連するものとして解釈することもできる気がする。

 

車を廃車にしたから全部解決した。というのはちょっと無理があるような気がする。

呪われた彼氏の影響で手形が出たなら、影響したのは車ではなくて彼女本人のはずである。なのに廃車にしたから解決として大丈夫なのだろうか?

 

猫が部屋の一箇所を見つめて不気味、という話は猫を飼っていればよくある話らしいので、事故物件ではないのかもしれない。しかし月5万円というのは安すぎる気がする。

彼女が5万の物件に出会ったタイミングと彼氏と別れたタイミングを聞いておけばよかった。もし時期が重なっていたら彼氏の呪いが5万の物件を呼び寄せたとか、そんなことを考えてもいいのかもしれない……いや、無理があるかな?

 

つまるところ、お姉さんの5万の物件と車と彼氏の話は、もしかしたら細い糸で繋がっているのかもしれないが、それは彼女の中ではあまり意味を成さない弱い連鎖で、論理的に考えるとすぐに破壊できるのだろう。だから彼女は車を廃車にしただけで満足できたのだ。

そう、バニーガールの網タイツのように、それらの関係はスカスカですぐに破ることができたというわけだ……お後がよろしいようなので、ここらへんで終わりにしようと思う。

 

最後に、この店で1人1万円くらい飲んだのだが、私はあいにく手持ちが7,000円しかなかったので友達に借金しました。

高熱で思い出すゆるウンチ犬

火曜日の仕事中に何度もお腹が痛くなってトイレに行った。そのことを不思議がっていたら、夜中に39℃の熱が出た。


朝まで熱が下がらなかったので、水曜日は仕事を休んで病院へ。とうとうコロナになったか……と思ったのだけれど、コロナもインフルエンザもまさかの陰性であった。

じゃあなんなの? となるところである。


ずっとお腹が痛いので多分感染性胃腸炎ではないかと思うが、結局答えは今も分かっていない。


そこから土曜日くらいまで下痢がずっと続いた。

金曜日の朝に熱は下がっていたので、金曜はリモートワークで仕事に復帰したが下痢は続いていた。

日曜日に、やっと少し下痢が治って硬めのウンチが出た。たが、硬便の後のウンチはまた下痢だった。


結局月曜日になっても下痢の治りは微妙だ。

お腹が痛いわけではない。ただ下痢だけ出てくる。

 

…………


もう死んでしまった実家の犬を思い出した。名前はクッキーといった。

バニラクッキーのような色をした犬だった。

クッキーはいつも下痢だった(下痢って書き過ぎなので、これからは“ゆるウンチ”と書く事にする)。


クッキーは物心ついた時からゆるウンチばかりしていた。そして、物心ついた時から老犬だった。

クッキーは昔の時代に生きた犬らしく、外の犬小屋で飼われていて、家族の残飯が主食だった。


この残飯がゆるウンチの原因なんじゃないかと言われていたが、クッキーはドッグフードを食べなかったので改善できなかった。

残飯といえども、犬用のエサよりも人間の食べ物の方が味が濃くて美味しいのだろうと思われた。


クッキーはゆるウンチ犬なので、普通の方法で糞の処理ができなかった。僕ら家族はクッキーのゆるウンチをホースの水を使ってジャーっと排水溝に流して処理していた。


たまにクッキーが普通の糞をする時があった。

その時家族は、クッキーをおおいに褒めて、みんなで盛り上がった。クッキーが普通の糞をするだけで家族のニュースになった。


「もしかしたらクッキーのゆるウンチが治ったのかもしれない」


みんなでそう言ったが、その次の日のクッキーはやっぱりゆるウンチをするのだった。

 


今の僕は、なんだかクッキーに似ているな。

ゆるウンチ繋がりで、クッキーのことを思い出せた。

 

…………


クッキーはゆるウンチしかしないので散歩の時にウンチを拾うということができない。

でも家族で昔住んでいた家の周りは畑や田んぼが多く(今は再開発で住宅街になってしまったが、それはクッキーが死んだ何年も後の話だ)、クッキーが草葉の陰でゆるウンチをしてもあまり問題にならなかった。

いや、ダメなのだが、ゆるウンチなので物理的に回収ができないのだ。


ある日クッキーを散歩していると、クッキーがある家の前でしゃがみ込んでゆるウンチを始めた。その家の前は思いっきりアスファルトで、というか家の前なので当然なのだが、人の通り道であった。


その通り道の真ん中でゆるウンチをするので大迷惑だ。しかも間の悪いことに、なんとその家のおじさんがちょうどホースで水やりをしていて、おじさんは自分の家の前で他人の犬がゆるウンチをするところをまざまざと見せつけられることになってしまった。

僕は自分の犬がゆるウンチをしているところをおじさんに見せつけてしまった。


流石に僕はマズイと判断して「コラ!」と叫びながらクッキーを引っ張るのだけれど、ウンチの体勢を取った犬というのはだいたい不動である。

クッキーは多少引きづられて動いたが、多少でしかなく、ゆるウンチの軌道ができた。僕はもう観念して

「すみません、うちの犬のゆるウンチを片付けるので、ホースを貸していただけませんか? 全部自分でやりますんで」

というようなことを、ホースで水を撒きながら一部始終を見ていたおじさんに言った。謝罪のニュアンスをこめた。


するとその時のおじさんの返事が意外で、今でも覚えている。

「いいよいいよ、私がやるよ」

そう言っておじさんは僕の申し出を断った。

「いや、でも、申し訳ないので」

「いいんだよ、大丈夫、自分でやるから」

「そうですか……すみませんありがとうございます」


僕はそのまま歩き去った。少しすすんで振りかえると、おじさんがホースの水でクッキーのゆるウンチを近くの排水溝まで流していた。

それは、自分の家でやっていることとあまりによく似ていたので不思議な気分になったのを覚えている。


あの時のおじさんの気持ち、自分の家の前でゆるウンチされている所を思いっきり見てしまった気持ち、10歳かそこらの子供にウンチを片付けるためにホースを貸してくれと頼まれた時の気持ち、それを断って知らない犬のウンチを自分で流す気持ち、どれをとってもどれも今だに分からない。


たぶん一生分からないだろう。そんなこと起きないだろうから。

クッキーは僕が物心ついた時から、ずっとゆるウンチをしていたが、寿命はとても長かった。20年近く生きたと思う。

お坊さんが、あの犬はこの家を悪いものから守っているかもしれませんね。みたいな事を言ったことがある。

そんな犬だった事を思い出せた。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルの感想を喋ったので文字起こし

こんばんわ、魚の精巣です。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」が公開されたので、歴代のインディを全部みた上で映画館に行ってみようと思い立ち、一気見しながら各作品の感想をTwitterのスペースで喋るということをしました。

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当初は喋った内容を音声入力させて、楽に全作品の感想ブログを作ろうと画策していたんですが、音声入力の限界なのか、僕の滑舌が悪いのか、音声入力が全然使い物にならなかったのでメチャクチャ困っちゃいました。

 

なので妥協して、最新作の「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」の感想だけ、スペースで喋った内容を手打ちで文字起こししたいと思います。

軽率に目標地点を下方修正していくぜ!

 

というわけで、「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」の感想の文字起こしブログです。

なお、喋ってる一言一句をそのまま書くとキショいので、適度に整えたり割愛したりしてます。

 

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルの感想(口述)

 

「今帰る道すがらで喋るという、謎のことをやってますが……

あの、見、ました、し、全部見てから、復習してから行って良かったなっていうのが正直な感想ですね。

 

まずちゃんと、インディの私生活が崩壊していたのが逆に安心した(笑)

やっぱ、インディの私生活が順風満帆だったら逆にちょっと嫌だわ。って思ってたから、普通に崩壊してて安心しましたね。

っていうかハリソン・フォードの私生活……ハリソン・フォードじゃねえや、ハリソン・フォード(が演じる)役の私生活がうまくいってるって、あるのかな? っていう(笑)

やっぱちゃんと崩壊していましたね、予告編通りに。

 

あとなんだろうな、モブが……というかもう今回は敵が可哀想だったから(笑)

ナチスも可哀想だし、マッツ・ミケルセンももうちょっといい思いさせてあげても良かったんじゃないか、っていうぐらいの可哀想レベルでしたね(笑)

 

敵がやりたいことというのがハッキリしていて良かった。

逆にインディたちの目的が若干ハッキリしていないみたいなところがあったけど、敵の目的がハッキリしているのと、機関銃で列車をこう……フレンドリーファイアさせられる展開。見てらんねぇよなアレ、敵が可哀想(笑)

 

マッツ・ミケルセンの破滅キャラってなんであんなにハマってしまうんでしょうね? マッツがなんかナチスっぽい顔してますもん。

マッツ・ミケルセン、不幸にしかならないじゃん(笑)

だからまぁ、インディ・ジョーンズはモブが可哀想っていう話でもあるんだなって。

 

あとは、全部見たから言えるっていうか、分かったんですけど、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』と『クリスタル・スカルの王国』を見てから行くと良いのかもなって思いました。内容的に。

たぶん、魔宮の伝説と最後の聖戦を見ても良いけど……メインは失われたアークとクリスタル・スカルの王国なのかなぁって、それさえ押さえておけば楽しい、みたいなところはあるかもしれないですね。

 

あとねぇ、ちょっとやっぱ悲しくなっちゃったね〜ハリソン・フォードが完全におじいちゃんで……まぁでもしょうがないですね。

衝撃なのが、ハリウッドのCG技術が衝撃的すぎて(笑)

予告編でも普通に出てるから言っちゃうんですけど、若い頃のハリソン・フォードがチラッと出るのかな? と思ってたら、ガッツリ出てて、アレどういう技術なんですかね? あれはCGなのかな? 本人がやっててその上から若い頃の顔を貼ってるってことなのかな?(笑)

 

そこの技術が凄すぎて、全然違和感ないから。

もうハリウッドなんでもアリじゃんっていう……そこにね、すごい衝撃を受けました。CG技術が進化しすぎっていうか。

っていうまぁ、一種の恐ろしさ(笑)死者の口をガンガン開けますからねハリウッドは。*1

 

(インディは)クリスタル・スカルの頃は初老の男性みたいな感じだったけど、今回の運命のダイヤルだと本当にガチおじいちゃんという感じで。

もう……なんか……『インディお前もう無理だよ!』ってなるんですけど、本人も『ちょっともう(冒険は)無理かなぁ』と言いつつ、でもやっぱり動ける! というのがね。

まぁでも、足遅いですね(笑)インディ、だいぶ足遅かった。っていうのはありました。

 

あとアレ、若干(上映時間が)長いな、ちょっと長いなというのはありましたけど、まぁでも、内容的に結構それぐらいのボリュームが必要な話の構成ではあったかなっていう感じですかね。

 

とりあえず、やっぱりモブは可哀想。ナチスは可哀想っていう映画でしたね(笑)」

 

以上、感想でした。

いつもそれなりに考えて文章化するような感想が、口述だと脈略がなくてなんか変な感じがするな……。

あと5分くらい喋ってこの文量なので、ちょっと多すぎた。5分は長すぎた。

 

各作品の感想も喋ってはいるので、僕の気持ち悪い声が聞きたい場合は聞いてみてください。

はてなブログTwitter埋め込みの仕様が使いにくくなっちゃったので、リンク消しました。すみません。)

 

インディ・ジョーンズ、面白かった〜ちなみに僕が1番好きなのは『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』です(流石にそこは超えられなかったなぁ)。

ではまた。

*1:スター・ウォーズで亡くなった俳優をCGで再現して出演させたり、エピソード3で死んだはずのシスの暗黒卿をエピソード9で急に復活させたりする

おじさんかき揚げアップデート

世の中では、認識のアップデートが必要だと叫ばれている。

主にジェンダーの多様性や、女性差別となる言動について向けられることが多い言葉だ。

そしてこの言葉は、ざっくり言うとおじさん世代や大組織に対して使われることが多い気がする。若者や女性グループがおじさん達やあらゆる権力に向けて使うイメージがある。

 

良いことか悪いことかは置いておいて、メディアではこぞって“認識のアップデート”が叫ばれているにもかかわらず、“やらかし”は絶えない。

おじさんや大組織のような、凝り固まった認識・価値観を変えさせるのは簡単なことではないのだ。

僕も先日、似たような目に遭った。僕も、おじさんの認識がアップデートされないことによる被害者なのである。

 

今回のブログは社会派だ。だが、内容はくだらない。

 

僕は平日毎日のように50代後半のおじさんとランチに行っている。

なぜ? と思ったかもしれないが、細かいところまで書いていくと面倒くさいので、省く。

とりあえず、バブル世代くらいのおじさんと一緒に働いていて、毎日2人で仲良くランチに行っているのだ。まぁまぁ気を遣っているが、だいぶ打ち解けてきたので最初よりは慣れた。

 

ランチの店は飽きないように毎日ローテーションする。

月曜は居酒屋ランチへ行き、火曜はタイ料理、水曜はうどん───といった感じだ。

 

事件はいつもうどん屋で起きる。

 

僕とおじさんが行くうどん屋はウエスト(九州で展開しているうどんチェーン店。焼肉ウエストというのもあるぞ)だ。

エストにはかき揚げうどんという人気メニューがある。ウエストのかき揚げは美味い。だがちょっとデカイ。

 

このかき揚げのサイズはワンサイズだけみたいで、かき揚げうどん、かき揚ぶっかけうどんかき揚げ丼など、かき揚げが付いてくる全てのメニューで同じサイズのデカイかき揚げがドンッと乗ってくる。

1番ボリューミーなメニューはかき揚げ丼+うどんセットだ。

丼もの+うどんのセットは他にもミニカツ丼+うどんセットや、ミニイカ天丼+うどんセットなどのバリエーションが存在する。

 

お気付きの方もいると思うが、他の丼もの+うどんセットはミニ丼なのに、かき揚げ丼のセットだけはミニではなく通常サイズで出てくるのである。

デカイ。なのに値段は他のミニ丼セットとあまり変わらないので、大食漢の方にはとてもお得だと思います。オススメです。

 

話がズレた気がする。

とにかくウエストのかき揚げ系を頼む時は、自分の腹の具合と相談して注意しなければいけない。

かき揚げの量を見誤ってしまうと腹がピーピーになってしまう。

 

ところで、僕とランチに行くおじさんの好物は揚げものなのである。

ゆえにおじさんは今まで何度もかき揚げ系のうどんに挑戦し、敗戦している。残している。

残すだけならまだ良いが、頑張って食べて、午後からお腹痛くなって、仕事のパフォーマンスを落としたりしている。それは困る。

 

おじさんは、かき揚げ丼+うどんセット(大ボリュームのやつ)がダメだったら、次の週はかき揚げうどんに挑戦し、負けていた。

かき揚げのサイズは全部一緒なんですよ? 大丈夫ですか?」と釘を刺しても聞く耳を持たない。

よっぽど揚げ物が食べたいのだろう。

 

さらに次の週になったら

「このかき揚げ丼+うどんセットは、丼の方はミニかなぁ?」とか聞いてきた。

アンタそのセットは先々週注文してドデカセットに惨敗したヤツでしょうが! と心の中で叫びつつ、口では丁寧に

「それは通常サイズのかき揚げ丼だからめっちゃ量あります! 苦しいと思います!」と注意喚起しても、

「ん〜いけそうな気がする!」と言って注文して、残していた。

 

「これ、量多すぎない?」

というのが、おじさんがかき揚げ系に挑戦した時のお決まりのセリフだ。

 

だからいっつも量多いですよって言ってんじゃん! なんで毎回忘れるんだよ!?

 

本当に、これは一体どういうことなのだろうか? 単純に忘れてる? 覚えてるけど大丈夫だと思っちゃう?

それとも残す前提で注文しているのか? 分からない。

分からないけれど「これ、量多すぎない?」と言っているあたり、かき揚げは量が多すぎるという認識を自分の中にアップデートしていないように見える。

 

正直、おじさんがかき揚げうどんを注文しようとするたびに「大丈夫ですか?」と一声かけるのも面倒になってきている。

もう何も言わなくてもいいのかな? でも、真意はどうであれ「量多すぎない?」という言葉の中には

「お前なんで教えてくれなかったの?」

というニュアンスも含まれている気がするので、ひとこと言っておくことで予防線を張っておかないとなんだか怖い。

それに、僕が「かき揚げは量が多いですよ」と言うのを止めたら、おじさんの認識はずっとアップデートされないまま旧時代に囚われ続けてしまうかもしれない。

 

だが、そのアップデートが行われるのはいつなのだろうか?

 

そして、かき揚げですらアップデートにこれだけ苦労するのだから、複雑な社会問題の認識のアップデートというものはどれだけ大変なのだろうか?

そんなことを思いながら、僕は丸天うどんとかしわおにぎりを注文するのだ。

死体ばっかの夢

久しぶりのブログ更新ですが夢の話です。

 

──────

野外で授業があるので学校の中庭へ向かう。

木の上でカラスがムクドリの巣を荒らしている。ムクドリはカラスにけたたましい叫び声を浴びせるだけで何もできない。

 

戦争があったから、動物がたくさん死んだらしいという話を周りの誰かがやっている。

 

中庭には、色んな動物の死体がうず高く積まれていた。

種類ごとに綺麗に分類されて中庭を囲むように積まれている死体たちは、全て頭を中央に向けて並べられていた。

一番多いネズミの死体は、青白かったが、ところどころに腐敗が進んでいるような黒ずんだ色の死体もある。

 

他にはウサギの死体、イヌの死体、ネコの死体、ウマの死体、ペリカン・ハト・大きな鳥の死体、トウモロコシの死体(トウモロコシの死体?)、ゾウの死体というように積まれている。

 

どの死体も青白くて、その蒼白な顔を中庭の内側に立つ僕の方へ向けていた。

夢の中の僕は、怖いとか、そんな風には思わない。

中庭の木は葉が落ちて、鮮やかな茶色の落ち葉になっていたから、死体たちの色と落ち葉の色は僕に秋を思わせた。

 

僕は死体の群れの横を通り過ぎて、野外での授業に必要なイスを取りに行かなければならない。

死体たちは僕の身長くらいまで積まれているから、一番下の死体は潰れて息苦しそうだった。

死体、死体、死体死体死体。

こんなに死体があって、腐ってそうなものもあるのに、腐敗臭はしない。少し変なミントのような臭いはする。

「これが死臭か、死臭と腐臭は違うんだな」

と夢の中の僕は思う。実際はどちらも嗅いだことはない。

 

生徒みんなでイスを中庭に出して授業を受ける。

この前のテストの結果を返してもらう。僕の点数が一番低かったらしい。

「君は文章を書くんだからちゃんと書けるはずだろう? どうした、気が抜けて油断でもしたのか?」と先生に励ましを言われる。

僕は惨めな気持ちになった。

 

──────────────

っていう夢。

新宿のゴジラを見た話

新宿に初めて行った。

行く前に調べておいたいくつかの観光スポットで気になったのは、紀伊國屋とSOMPO美術館だった。ゴジラは好きだけど何故かゴジラヘッドにはあまり魅力を感じないことに、調べていた当時は不思議に思った。

「新宿はビル群がすごい」というような記事をどこかで見たような気がする。僕は正直建築には興味がないのでその記事の内容は流し読みしたんだと思う。だからあまり覚えていない。

 

実際に行ってみると新宿のビル群は確かにデカかった。建物もデカいし道路もデカい。これで道路の幅が狭ければ背の高いビルから圧迫感を受けるのかもしれないが道路がデカいので街の狭さを感じない。

どこまでも飲食店や繁華街が広がっているんじゃないかという錯覚を受ける、とにかく印象として街のデカさを感じたのだ、福岡の比じゃない。

 

街の狭さを感じないと書いたがこれは新宿という街そのものの話で、新宿を歩くと人が多くてめちゃ狭かった。

例えてみるなら森の中の蟻になった気分だろうか。東京(新宿)が森で人間が蟻だ。森は空間としては広いが地面の蟻は道が決まっているので押し合いへし合いして歩く。よくコンクリートジャングルと言うがまさに言い得て妙だなと思った。

 

さて、建築に興味がないと書いておきながら、泊まるホテルが東京都庁の近くだったのでせっかくだから見ておきたいということで、僕は一緒に来てくれたフォロワーさんにワガママを行って都庁の前を通った。

観光地と言われるだけあって滅茶苦茶デカイ(さっきからデカイデカイとばかり書いている気がする)。物というものは実際に目で見るものと写真や数値で知るものとでは全然違うのだなと思った。写真は風景を切り取ることしかできないが、絵は実際に人間が見ているものに寄せることができる。という話を思い出した。

 

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同時に思い出したのはゴジラのことだ。確か東京都庁は何かの作品でゴジラにぶっ壊されたはず……(後で調べてみたら「ゴジラvsキングギドラ」だった。好きな作品だ)。

都庁を見上げながら、これが壊れるのかぁ〜と考えるとなんだか楽しい。ゴジラという災害のインパクトとかヤバさが実感できる。

 

そこで気付いた。なるほど、都民はこういう気持ちでゴジラ映画を見ているのかもしれない。

現実とフィクションのシンクロ部分を自分の目で確認するのは楽しい、聖地巡礼というやつだ。らき☆すた泉こなたが京都駅で「ここにイリスが入ったのか……」と言ったアレである。

 

しかし都民にとってのゴジラ映画の聖地はわざわざ見に行く聖地というほど遠くではない、もしかしたら職場かもしれない。そういうかなり日常生活寄りの現実とフィクションがゴジラ映画の中で混ざり合い、現実は破壊されていく。

そこに恐怖を覚える人もいるだろうし、快感を覚える人もいるだろう。

ゴジラvsスペースゴジラで「福岡タワーじゃなくて天神とか博多とかで暴れてくれよ!!」と思った僕からすれば、日常がバンバン破壊されてしまう東京都民が羨ましくなった。

 

その日の夜はゴールデン街で飲んだので、歌舞伎町のゴジラヘッドをチラッと拝見したのだが、自分でも意外なほどに刺さらなかった。

 

なんか違うな〜となってしまったのだが、多分その理由はいくつかあって、ひとつはゴジラがビルに埋まってたからだと思う。

ゴジラだったらビルを破壊してほしいのに、ビルに埋まって死んでしまっていた。

周りの人もゴジラがいるのに全然逃げてなかった。ゴジラが来たら人間はみんな地面の蟻のような存在になってほしいのに、歌舞伎町はゴジラなんか気にもせず、地面の光に夢中なようだった。

それに、都庁を見た後だったので「意外に小さいな」と思ってしまったのもある。ゴジラヘッドは実際のゴジラくらいのサイズらしいが、このゴジラで都庁を壊せるのか? と初見一発で思ってしまったような気がする。

 

なるほど、ゴジラヘッドというのは結局のところ建築物だから偽物として見てしまうな……と気付いた。僕は建築には興味ないのである。

昼間に見た東京都庁は、そこに本物のゴジラの影というか幻を見た気がした。夜に見たゴジラヘッドはゴジラの頭が付いたビルだ。そういう風に僕の感性は処理したらしい。

 

どうやら僕はいつの間にか、かなりめんどくさいオタクとしての感性だけを育てていたみたいだ。

それなのにオタクとしての知識や愛は別にそこまでなかったりする。ただのめんどくさい人だ、自分で自分がめんどくせぇ。

 

今回はそれが分かっただけでも良かったのかもしれない、そういうことにしておこう。しといて下さい。

 

ところでゴジラといえば、今度日本で新作があるらしい。監督は山崎貴

山崎貴かぁ〜〜」と、山崎貴作品をちゃんと見てもいないクセに(アルキメデスの大戦とか面白いらしい)下馬票だけで不安になっている。

そういうところがまためんどくさい。

田川市へ旅行に行った全貌

タイガー立石という画家兼漫画家をご存知だろうか。

福岡市美術館で1点だけこの作家の絵を見てから、5千円の作品集を買うほどには気に入った僕だったが、恥ずかしながらこの作家の出身地が福岡県田川市であること(近い! とこの時は思った)、田川市美術館に彼の作品が多く収められていること(ラッキー! と最初は思った)を知ったのはつい最近である。

 

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タイガー立石の「TRA(トラ)」という作品集

 

というわけで田川市美術館へタイガー立石の絵を見に行くことにした僕の旅行内容が今回のブログの内容である。いつもよりかなりブログっぽい内容になるだろう(なってほしい)。

 

アクセス

まず福岡市中心部(天神・博多)から田川市への行き方だが、特急バスで行くことにした。電車を乗り継いでも行けるみたいだったが、本数が限られているのか、僕が出発したい時間でGoogleマップのルート検索をするとルートが消えてしまった。電車は乗り換えも多くて不安だったので、今回は天神バスターミナルから1本で田川市まで行ける特急バスを使うことにしたのだった。

 

西鉄天神高速バスターミナル〜石炭記念公園口の特急バスは片道1,520円で約1時間半かかる(わりと遠い!)。

バスの中にはトイレがなかった、もしも乗るなら1時間半トイレを我慢することになるので事前に済ましておいた方がいいと思う。家を出る前に賞味期限がギリギリの牛乳を500ml飲んでいて、腹の調子が万全とは言い難かった僕にとってこの乗車時間は結構キツかった。あと少し酔った。僕は油断するとすぐ車酔いする。

 

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切符は西鉄天神高速バスターミナルの券売機で買える、予約も要らない。

 

ちょっと辛い思いをしたものの、石炭記念公園口のバス停に13:30ごろ着いた僕は、そのままお目当ての田川市美術館へ徒歩で向かった。

バス停から美術館までは徒歩で無理なく行ける、10分くらいだったと思う。途中に雰囲気のあるラーメン屋があったが、車酔いが少し残っていたのでラーメンは食べずにまっすぐ美術館へ向かう。

まずはタイガー立石の絵を見なければ、この旅行は始まらないのである。

 

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田川市美術館

 

美術館とタイガー立石の図録

結論から書くと、タイガー立石の絵は無かった。1枚も無かった。

これはあらかじめ調べていなかった自分の落ち度なのだが、特別展示をやっていて常設の展示がほとんど無かったのである。

本当に少しだけあった常設展示の作品は炭鉱美術作品の展示に使われていた(田川市はかつて炭鉱の町であったことから、炭鉱をテーマにした作品が有名らしい)。もしかしたら特別展の中にまぎれているかもと思ったが、無かった。

 

特別展示の作品もちゃんと見た。面白かったが、心の中でタイガー立石を探しながら鑑賞していたので、全然作品に集中せずかなり上滑りな鑑賞になっていたことは否めない。

「絵が上手だなぁ、でもこれもタイガー立石じゃないなぁ」などと考えながら見ていた。全然集中していない。往復3,040円払っているのにコレである。正直悲しい。

 

ちなみに、特別展の入場料金は400円だったのだが、常設展はなぜか入場料を払わずにタダで入れた。

いつもタダである筈はないので、特別展の時だけタダで見られるのだろうか? そこはマジで分からない。

 

とても良かったことが一つ。田川市美術館の売店タイガー立石の図録が1,100円で売ってあってそれを買えたことだ。

本物の絵は展示されてなかったけれど、20年前の図録が新品で買えたというのはすごい事のような気がする。しかも図録の絵はポストカードになっていて、全部で20枚もあるのだから1,100円はかなりお得なのではないか。

 

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2003年1月の展示会の図録なので、本当に20年前だ。

 

図録を買うとき、レジの所に座っていた係の人に「お願いします」と声をかけたら「少々お待ちください」と言って急いで事務所に引っ込んでいった。何か都合が悪かったのかなと思っていると、その人がレジの中身(引き出しみたいなやつ)を抱えて帰ってきたので、レジ打ちしてたんじゃなかったんかい! となった。その人がなんだかガチャガチャやってレジの準備をしている時間を待つ気まずさ。

自分1人のためにレジの準備からしてもらってなんだか申し訳なかった。そのうえ僕の買おうとしていた図録が少し汚れていたらしく、新しいものに変えてくれた。真心(まごころ)がすごい、より一層申し訳ない。

 

博物館へ

タイガー立石の絵が無かったとはいえ、図録を手に入れたのは嬉しかった。土地勘も分かったので次回はもっとしっかり調べてから田川市美術館に来たい。

想定外のことはあったが、せっかくの旅行なのでもっと田川を見て回ることにした僕は、田川市石炭・歴史博物館に行くことにした。

 

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田川市石炭・歴史博物館の入り口

 

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博物館がある石炭記念公園内には炭鉱の遺構が残っている

 

田川市は炭鉱の町だったので、炭鉱に関する博物館がある。なんでも、ユネスコ世界記憶遺産に日本で初めて登録された、山本作兵衛の炭鉱記録画コレクションが展示されているとかなんとか……正直に書こう、僕は炭鉱とかこういう産業遺産に関わるものにはあまり知識も興味もないのである……ところで田川といえばヤンキーで有名な町なのだ。僕は田川と聞くと炭鉱ではなくまずヤンキーが思い浮かぶ、ぶっちゃけ田川はちょっと怖いと思っていた町なのだ。

 

もちろん実際に来てみると、当たり前だがいきなりヤンキーに絡まれて怖い目に遭うなんてことはなく、むしろみんな優しかったということはちゃんと書いておかなければならない。

 

要するに何が言いたいかというと、僕のつい最近までの田川のイメージはガラの悪いヤンキーのイメージであって、タイガー立石のことも、炭鉱のことも全く知らなかったということだ、申し訳ないが。

 

 

そんな人が田川市石炭・歴史博物館に行って楽しめるのか? というと、これが案外楽しかったのである。

そもそも石炭というのはシダ植物の化石なので、化石が好きな僕には楽しめる要素があったのである。そのことに行ってから気が付いた。他にも、当時の炭鉱街で暮らす人々の生活の紹介や、スチームパンクの世界感がある生々しい昔のガチのガスマスク等々、興味深いものがいくつもあった。

 

博物館の客は僕1人ではなかったが、かなり間隔が空いていたので1人でのびのびと見ることができた。

博物館の2階の展示はユネスコ世界記憶遺産の山本作兵衛コレクションが展示されていて、この博物館の最大の見どころポイントだと思う。

やはりこのコレクションはかなり大事にされているものなのだろう、2階にいたのは僕1人だけにもかかわらず、ちゃんと係の人が監視に立っていた。立っていたというか、待ち構えていたし、監視よりむしろ案内であった。

「どうぞこちらです!」と言って中に誘導してくれたし、

「順路は右からどうぞ!」と何も聞いてないのに教えてくれるのである。

そして僕がコレクションを鑑賞している間ずーっと見守ってくれていた。美術館につづき、またしても自分1人のために係の人を動員してしまってなんだか申し訳ない。あとちょっぴり恥ずかしかった。

 

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博物館も公園もほとんど人がいなかった

 

濡れたアーケード

田川市石炭・歴史博物館、なかなか侮りがたしだった。

次はどうしようか? 昼飯を食べていない僕はさすがにお腹が空いてきたので、何か飯を食べて帰ろうと思った。

 

駅まで行けば何か店があるだろう。Googleマップをみると田川市の主要な駅というのは田川伊田駅か田川後藤寺駅のような気がするので、博物館から近い田川伊田駅に行ってみることにした。

博物館から田川伊田駅へはアーケードの商店街を通って行ける、天気もあまり良くないし、商店街の中にも何か店があるかもしれない。丁度いいじゃないかとアーケードに入っていったのだが、これが驚くほどシャッター商店街だった。

 

時間的に閉まっていたというのもあるかもしれない(15時半くらいだったと思う)が、土曜日でこれはなかなかである。

あと不思議なことに、この日は小雨が降っていたのだが、アーケードの中の地面が全てしっとり濡れていた。ツルツル滑る感じがしたので普通に怖かった、なぜ濡れているのか? 結構な距離のアーケードなのに、出入り口はおろか中間部にいたるまで全ての床が濡れているのである。なぜなのか……。

 

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光が床に反射してキレイだね、でも滑って危ないね。

 

田川伊田

僕が博物館を見ている間に土砂降りがきたのだろうか、それともアーケード全体を1回水で流して掃除する日だったのか、だからシャッターばかりなのか……分からない。いくら考えても分からないものはあるものだなぁとか考えながら歩いていると、田川伊田駅に着いた。

 

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田川伊田駅の駅舎

 

田川伊田駅の駅舎はカワイイ。2階にはなんとホテルもある。田川市のどこかを観光の中心地にしなければならないとしたらここだろう。

店への期待も高まる。

 

駅舎の2階のホテルの前にはバーのようなものがあったが開いていなかった、営業時間じゃないのだろう。

駅前には小さな甘味屋があって、結構人がいて流行っている雰囲気だったが、今の僕は空腹なのでスイーツよりももっとガッツリした飯を食べたい気分だ。

駅舎の1階に軽食屋があることには最初から気付いていたのだが見ていないフリをしていた。なんとなくこの店に入るのには抵抗感がある。駅の中の店なのにローカル感がすごいのだ。

 

地方へ行くと観光地で旅行客向けに門戸を開けてある(ようこそ! とか書いてあったりする)のになんとなくの雰囲気が地元感強くて入りにくい店というのがないだろうか? アレであった。

実は駅舎の1階には他にパン屋があったのだが、この時の僕は気付かなかった。もしも気付いていたら真っ先にパン屋へ行っていただろう。

なんとなく入りづらい軽食屋の前には「焼きそば」と書かれているノボリがあり、心を惹かれる。焼きそばが食べたい……でもこのローカル感強めの店で失敗したくない……。

 

悩んだが、空腹には勝てない。僕は意を決して入店した。

 

初見殺しローカル店

店に入ると、ラーメン屋のような歓迎を受けた。元気よく「空いているお席どこでもどうぞー!」と言われる。

店内は大小の机が配置されていて、MAXで2, 30人は入りそうだが、この時の客は2, 3人くらいだった。

レストランというよりもフードコート、いや、文化祭の教室カフェに近い。なんだか浮き足立っていて落ち着かない。空いている席はどこでもどうぞと言われたので隅っこの席に座ろうとしたのだが「どこでも大丈夫ですよ? さぁどうぞどうぞ!」と言われて、真ん中あたりの6人座れるデカいテーブル1人だけ案内されてしまった。いやデカ過ぎる。

どこでも座っていいなら隅っこの席が良かったんだけど! と思ったもののもう遅い。

 

ちょっと困ってしまったが、旅行先の歓迎ムードとしてはこれくらいの熱烈さの方がありがたい。旅先で冷たくされると堪える……少し厚かましい接客の方が旅行に来たという感じがしないでもない、特に一人旅なら尚更だ。そんな風に考えながらメニューを見ると……

 

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メニュー。色々あるけど……

 

今まで通りのうどんに加えてメニューを追加と書いてあるのにうどんのメニューが書いてないじゃないか! これは初見殺しすぎるだろ、やはりこの店はスーパーローカルな店らしい。

 

店内を見渡すと、入り口付近のうどんの麺を茹でているのであろう湯気がモワモワと出ている上の方に、うどんのメニューが貼られている。

だが、三十路を迎えてから低下を感じている視力では、そのうどんのメニューの細い文字を読み取ることができない。

だがだが、自分は別にうどんを食べたくてこの店に入ったわけではないので問題なしである。

 

もう一度メニュー表に目を落とす。うどん以外は何がある?

この店は入り口付近でうどんを茹でているが、店内の反対側では鉄板で焼きそばを焼いている。つまり厨房が二つあるようなかっこうだ。

これが僕が最初にフードコートっぽいと思った理由である。いま僕の近くで鉄板の上で誰かの焼きそばがジュージューと踊らされている。実に食欲を誘う光景だ。

 

やはり焼きそばだろうか? いや、僕は焼きそばよりも気になるメニューを見つけていた。

「ヤンキーナポリタン」である。

 

ヤンキーナポリタン

さっきも述べたように、田川といえばヤンキーである。旅行中にエンカウントしたりはしないだろうと思っていたが、ここで出てきた!

一気に気になってきた。ヤンキーのナポリタンとはいったいどういうことだろう? 冒険してみるべきか否か……いや、せっかく田川市まで来たのだからヤンキーを拝んでおくべきだろう。

 

鉄板をジュワジュワいわせていた店主っぽいおじさんに、かなりドギマギしながら注文できた。「はいよオッケー!!」とおじさんはやたら声が通る。威勢がいい。

僕のナポリタンが鉄板の上で料理されていく。もういい加減空腹は最大値だ。

田川市には最初から振り回されっぱなしだが、最後に有終の美を飾りたい。それはこのヤンキーナポリタンなる料理にかかっている。

 

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ヤンキーナポリタン

 

目玉焼きが付いている! これは当たりかもしれない……ケチャップの焦げた匂いと上に振りかけられた粉チーズの匂いが合わさって非常にかぐわしい。しかも粉チーズとタバスコは自分でかけ放題というサービスっぷりである。

しかしこれはどこらへんがヤンキーなのだ?

 

食べてみる。結論から書くと美味い。

できたてのナポリタンのアツアツさで粉チーズが溶けて麺にうまく絡む。ウインナーの肉感も空腹にパンチが効く、もしかしたら肉を食べたかったのかもしれない僕は。

鉄板の上で踊らされたケチャップの焦げ味というものだろうか? 香ばしいなオイ。

 

麺の上に半熟目玉焼きを乗せて割ってみる。ケチャップに染まっていた麺に黄身という更なるデコレーションを施して食べるとウマイことは人類みな知っている。ウマイ。

大当たりじゃないか、ヤンキーどころか超優等生だよコイツ。

 

今日はお目当てのタイガー立石の絵が見られずどうなることかと思っていたが、最後にナポリタンに救われた。

会計の時、例の店主っぽいおじさんに「お口に合いましたか!?」と元気100倍で聞かれて、またドギマギしてしまったがなんとか美味しかったですと言えた。

 

田川、また来よう

帰りのバスは再びアーケードを通って(やっぱりシャッター締まりまくりだった)石炭記念公園口のバス停に戻った。

特急バスはだいたい1時間に1本のペースで来ている。

 

バス停前にセブンイレブンと小売店があるのだが、小売店の中にお土産コーナーというか贈り物コーナーがあったので、そこでちょっと時間を潰してバスをまった。

帰りのバスは寝た。

 

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石炭記念公園口にはホテルもある

 

色々あった田川だったが、また来たいと思った。だってタイガー立石見れてないし……。

今度はちゃんと調べて、電車で行ってみようかな。