魚の感想

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田川市へ旅行に行った全貌

タイガー立石という画家兼漫画家をご存知だろうか。

福岡市美術館で1点だけこの作家の絵を見てから、5千円の作品集を買うほどには気に入った僕だったが、恥ずかしながらこの作家の出身地が福岡県田川市であること(近い! とこの時は思った)、田川市美術館に彼の作品が多く収められていること(ラッキー! と最初は思った)を知ったのはつい最近である。

 

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タイガー立石の「TRA(トラ)」という作品集

 

というわけで田川市美術館へタイガー立石の絵を見に行くことにした僕の旅行内容が今回のブログの内容である。いつもよりかなりブログっぽい内容になるだろう(なってほしい)。

 

アクセス

まず福岡市中心部(天神・博多)から田川市への行き方だが、特急バスで行くことにした。電車を乗り継いでも行けるみたいだったが、本数が限られているのか、僕が出発したい時間でGoogleマップのルート検索をするとルートが消えてしまった。電車は乗り換えも多くて不安だったので、今回は天神バスターミナルから1本で田川市まで行ける特急バスを使うことにしたのだった。

 

西鉄天神高速バスターミナル〜石炭記念公園口の特急バスは片道1,520円で約1時間半かかる(わりと遠い!)。

バスの中にはトイレがなかった、もしも乗るなら1時間半トイレを我慢することになるので事前に済ましておいた方がいいと思う。家を出る前に賞味期限がギリギリの牛乳を500ml飲んでいて、腹の調子が万全とは言い難かった僕にとってこの乗車時間は結構キツかった。あと少し酔った。僕は油断するとすぐ車酔いする。

 

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切符は西鉄天神高速バスターミナルの券売機で買える、予約も要らない。

 

ちょっと辛い思いをしたものの、石炭記念公園口のバス停に13:30ごろ着いた僕は、そのままお目当ての田川市美術館へ徒歩で向かった。

バス停から美術館までは徒歩で無理なく行ける、10分くらいだったと思う。途中に雰囲気のあるラーメン屋があったが、車酔いが少し残っていたのでラーメンは食べずにまっすぐ美術館へ向かう。

まずはタイガー立石の絵を見なければ、この旅行は始まらないのである。

 

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田川市美術館

 

美術館とタイガー立石の図録

結論から書くと、タイガー立石の絵は無かった。1枚も無かった。

これはあらかじめ調べていなかった自分の落ち度なのだが、特別展示をやっていて常設の展示がほとんど無かったのである。

本当に少しだけあった常設展示の作品は炭鉱美術作品の展示に使われていた(田川市はかつて炭鉱の町であったことから、炭鉱をテーマにした作品が有名らしい)。もしかしたら特別展の中にまぎれているかもと思ったが、無かった。

 

特別展示の作品もちゃんと見た。面白かったが、心の中でタイガー立石を探しながら鑑賞していたので、全然作品に集中せずかなり上滑りな鑑賞になっていたことは否めない。

「絵が上手だなぁ、でもこれもタイガー立石じゃないなぁ」などと考えながら見ていた。全然集中していない。往復3,040円払っているのにコレである。正直悲しい。

 

ちなみに、特別展の入場料金は400円だったのだが、常設展はなぜか入場料を払わずにタダで入れた。

いつもタダである筈はないので、特別展の時だけタダで見られるのだろうか? そこはマジで分からない。

 

とても良かったことが一つ。田川市美術館の売店タイガー立石の図録が1,100円で売ってあってそれを買えたことだ。

本物の絵は展示されてなかったけれど、20年前の図録が新品で買えたというのはすごい事のような気がする。しかも図録の絵はポストカードになっていて、全部で20枚もあるのだから1,100円はかなりお得なのではないか。

 

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2003年1月の展示会の図録なので、本当に20年前だ。

 

図録を買うとき、レジの所に座っていた係の人に「お願いします」と声をかけたら「少々お待ちください」と言って急いで事務所に引っ込んでいった。何か都合が悪かったのかなと思っていると、その人がレジの中身(引き出しみたいなやつ)を抱えて帰ってきたので、レジ打ちしてたんじゃなかったんかい! となった。その人がなんだかガチャガチャやってレジの準備をしている時間を待つ気まずさ。

自分1人のためにレジの準備からしてもらってなんだか申し訳なかった。そのうえ僕の買おうとしていた図録が少し汚れていたらしく、新しいものに変えてくれた。真心(まごころ)がすごい、より一層申し訳ない。

 

博物館へ

タイガー立石の絵が無かったとはいえ、図録を手に入れたのは嬉しかった。土地勘も分かったので次回はもっとしっかり調べてから田川市美術館に来たい。

想定外のことはあったが、せっかくの旅行なのでもっと田川を見て回ることにした僕は、田川市石炭・歴史博物館に行くことにした。

 

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田川市石炭・歴史博物館の入り口

 

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博物館がある石炭記念公園内には炭鉱の遺構が残っている

 

田川市は炭鉱の町だったので、炭鉱に関する博物館がある。なんでも、ユネスコ世界記憶遺産に日本で初めて登録された、山本作兵衛の炭鉱記録画コレクションが展示されているとかなんとか……正直に書こう、僕は炭鉱とかこういう産業遺産に関わるものにはあまり知識も興味もないのである……ところで田川といえばヤンキーで有名な町なのだ。僕は田川と聞くと炭鉱ではなくまずヤンキーが思い浮かぶ、ぶっちゃけ田川はちょっと怖いと思っていた町なのだ。

 

もちろん実際に来てみると、当たり前だがいきなりヤンキーに絡まれて怖い目に遭うなんてことはなく、むしろみんな優しかったということはちゃんと書いておかなければならない。

 

要するに何が言いたいかというと、僕のつい最近までの田川のイメージはガラの悪いヤンキーのイメージであって、タイガー立石のことも、炭鉱のことも全く知らなかったということだ、申し訳ないが。

 

 

そんな人が田川市石炭・歴史博物館に行って楽しめるのか? というと、これが案外楽しかったのである。

そもそも石炭というのはシダ植物の化石なので、化石が好きな僕には楽しめる要素があったのである。そのことに行ってから気が付いた。他にも、当時の炭鉱街で暮らす人々の生活の紹介や、スチームパンクの世界感がある生々しい昔のガチのガスマスク等々、興味深いものがいくつもあった。

 

博物館の客は僕1人ではなかったが、かなり間隔が空いていたので1人でのびのびと見ることができた。

博物館の2階の展示はユネスコ世界記憶遺産の山本作兵衛コレクションが展示されていて、この博物館の最大の見どころポイントだと思う。

やはりこのコレクションはかなり大事にされているものなのだろう、2階にいたのは僕1人だけにもかかわらず、ちゃんと係の人が監視に立っていた。立っていたというか、待ち構えていたし、監視よりむしろ案内であった。

「どうぞこちらです!」と言って中に誘導してくれたし、

「順路は右からどうぞ!」と何も聞いてないのに教えてくれるのである。

そして僕がコレクションを鑑賞している間ずーっと見守ってくれていた。美術館につづき、またしても自分1人のために係の人を動員してしまってなんだか申し訳ない。あとちょっぴり恥ずかしかった。

 

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博物館も公園もほとんど人がいなかった

 

濡れたアーケード

田川市石炭・歴史博物館、なかなか侮りがたしだった。

次はどうしようか? 昼飯を食べていない僕はさすがにお腹が空いてきたので、何か飯を食べて帰ろうと思った。

 

駅まで行けば何か店があるだろう。Googleマップをみると田川市の主要な駅というのは田川伊田駅か田川後藤寺駅のような気がするので、博物館から近い田川伊田駅に行ってみることにした。

博物館から田川伊田駅へはアーケードの商店街を通って行ける、天気もあまり良くないし、商店街の中にも何か店があるかもしれない。丁度いいじゃないかとアーケードに入っていったのだが、これが驚くほどシャッター商店街だった。

 

時間的に閉まっていたというのもあるかもしれない(15時半くらいだったと思う)が、土曜日でこれはなかなかである。

あと不思議なことに、この日は小雨が降っていたのだが、アーケードの中の地面が全てしっとり濡れていた。ツルツル滑る感じがしたので普通に怖かった、なぜ濡れているのか? 結構な距離のアーケードなのに、出入り口はおろか中間部にいたるまで全ての床が濡れているのである。なぜなのか……。

 

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光が床に反射してキレイだね、でも滑って危ないね。

 

田川伊田

僕が博物館を見ている間に土砂降りがきたのだろうか、それともアーケード全体を1回水で流して掃除する日だったのか、だからシャッターばかりなのか……分からない。いくら考えても分からないものはあるものだなぁとか考えながら歩いていると、田川伊田駅に着いた。

 

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田川伊田駅の駅舎

 

田川伊田駅の駅舎はカワイイ。2階にはなんとホテルもある。田川市のどこかを観光の中心地にしなければならないとしたらここだろう。

店への期待も高まる。

 

駅舎の2階のホテルの前にはバーのようなものがあったが開いていなかった、営業時間じゃないのだろう。

駅前には小さな甘味屋があって、結構人がいて流行っている雰囲気だったが、今の僕は空腹なのでスイーツよりももっとガッツリした飯を食べたい気分だ。

駅舎の1階に軽食屋があることには最初から気付いていたのだが見ていないフリをしていた。なんとなくこの店に入るのには抵抗感がある。駅の中の店なのにローカル感がすごいのだ。

 

地方へ行くと観光地で旅行客向けに門戸を開けてある(ようこそ! とか書いてあったりする)のになんとなくの雰囲気が地元感強くて入りにくい店というのがないだろうか? アレであった。

実は駅舎の1階には他にパン屋があったのだが、この時の僕は気付かなかった。もしも気付いていたら真っ先にパン屋へ行っていただろう。

なんとなく入りづらい軽食屋の前には「焼きそば」と書かれているノボリがあり、心を惹かれる。焼きそばが食べたい……でもこのローカル感強めの店で失敗したくない……。

 

悩んだが、空腹には勝てない。僕は意を決して入店した。

 

初見殺しローカル店

店に入ると、ラーメン屋のような歓迎を受けた。元気よく「空いているお席どこでもどうぞー!」と言われる。

店内は大小の机が配置されていて、MAXで2, 30人は入りそうだが、この時の客は2, 3人くらいだった。

レストランというよりもフードコート、いや、文化祭の教室カフェに近い。なんだか浮き足立っていて落ち着かない。空いている席はどこでもどうぞと言われたので隅っこの席に座ろうとしたのだが「どこでも大丈夫ですよ? さぁどうぞどうぞ!」と言われて、真ん中あたりの6人座れるデカいテーブル1人だけ案内されてしまった。いやデカ過ぎる。

どこでも座っていいなら隅っこの席が良かったんだけど! と思ったもののもう遅い。

 

ちょっと困ってしまったが、旅行先の歓迎ムードとしてはこれくらいの熱烈さの方がありがたい。旅先で冷たくされると堪える……少し厚かましい接客の方が旅行に来たという感じがしないでもない、特に一人旅なら尚更だ。そんな風に考えながらメニューを見ると……

 

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メニュー。色々あるけど……

 

今まで通りのうどんに加えてメニューを追加と書いてあるのにうどんのメニューが書いてないじゃないか! これは初見殺しすぎるだろ、やはりこの店はスーパーローカルな店らしい。

 

店内を見渡すと、入り口付近のうどんの麺を茹でているのであろう湯気がモワモワと出ている上の方に、うどんのメニューが貼られている。

だが、三十路を迎えてから低下を感じている視力では、そのうどんのメニューの細い文字を読み取ることができない。

だがだが、自分は別にうどんを食べたくてこの店に入ったわけではないので問題なしである。

 

もう一度メニュー表に目を落とす。うどん以外は何がある?

この店は入り口付近でうどんを茹でているが、店内の反対側では鉄板で焼きそばを焼いている。つまり厨房が二つあるようなかっこうだ。

これが僕が最初にフードコートっぽいと思った理由である。いま僕の近くで鉄板の上で誰かの焼きそばがジュージューと踊らされている。実に食欲を誘う光景だ。

 

やはり焼きそばだろうか? いや、僕は焼きそばよりも気になるメニューを見つけていた。

「ヤンキーナポリタン」である。

 

ヤンキーナポリタン

さっきも述べたように、田川といえばヤンキーである。旅行中にエンカウントしたりはしないだろうと思っていたが、ここで出てきた!

一気に気になってきた。ヤンキーのナポリタンとはいったいどういうことだろう? 冒険してみるべきか否か……いや、せっかく田川市まで来たのだからヤンキーを拝んでおくべきだろう。

 

鉄板をジュワジュワいわせていた店主っぽいおじさんに、かなりドギマギしながら注文できた。「はいよオッケー!!」とおじさんはやたら声が通る。威勢がいい。

僕のナポリタンが鉄板の上で料理されていく。もういい加減空腹は最大値だ。

田川市には最初から振り回されっぱなしだが、最後に有終の美を飾りたい。それはこのヤンキーナポリタンなる料理にかかっている。

 

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ヤンキーナポリタン

 

目玉焼きが付いている! これは当たりかもしれない……ケチャップの焦げた匂いと上に振りかけられた粉チーズの匂いが合わさって非常にかぐわしい。しかも粉チーズとタバスコは自分でかけ放題というサービスっぷりである。

しかしこれはどこらへんがヤンキーなのだ?

 

食べてみる。結論から書くと美味い。

できたてのナポリタンのアツアツさで粉チーズが溶けて麺にうまく絡む。ウインナーの肉感も空腹にパンチが効く、もしかしたら肉を食べたかったのかもしれない僕は。

鉄板の上で踊らされたケチャップの焦げ味というものだろうか? 香ばしいなオイ。

 

麺の上に半熟目玉焼きを乗せて割ってみる。ケチャップに染まっていた麺に黄身という更なるデコレーションを施して食べるとウマイことは人類みな知っている。ウマイ。

大当たりじゃないか、ヤンキーどころか超優等生だよコイツ。

 

今日はお目当てのタイガー立石の絵が見られずどうなることかと思っていたが、最後にナポリタンに救われた。

会計の時、例の店主っぽいおじさんに「お口に合いましたか!?」と元気100倍で聞かれて、またドギマギしてしまったがなんとか美味しかったですと言えた。

 

田川、また来よう

帰りのバスは再びアーケードを通って(やっぱりシャッター締まりまくりだった)石炭記念公園口のバス停に戻った。

特急バスはだいたい1時間に1本のペースで来ている。

 

バス停前にセブンイレブンと小売店があるのだが、小売店の中にお土産コーナーというか贈り物コーナーがあったので、そこでちょっと時間を潰してバスをまった。

帰りのバスは寝た。

 

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石炭記念公園口にはホテルもある

 

色々あった田川だったが、また来たいと思った。だってタイガー立石見れてないし……。

今度はちゃんと調べて、電車で行ってみようかな。