「僕はパラレルワールドの研究をしてるんだよ」
研究室で酒を飲みながら「Aさんってなんの研究をしてるんですか？」と聞いたら変な答えが返ってきた。うちは理系の研究室じゃないですよ？
「ここじゃないと出来ないんだよ、パラレルワールドと繋がってるからね」Aさん、だいぶ酔ってるみたいだな。
たぶん掘り下げても面白くないと分かっていても聞きたくなる。意味不明過ぎる。
「この研究室、よく物がなくなるだろ？ あれは向こうの世界に落ちちゃってるの」
それは教授と我々が縄張り宣言のように設置している資料や荷物の山が空間を圧迫しているからですよ。と言いながら冷蔵庫を開けると自分のビールが無い。ははぁ〜ん？ なるほど、壮大な言い訳というわけですか、面白くないです。
「いや飲んでないよ！ ビールが“向こう”に落ちたんだよ！」
……
そのうち寝てしまった。
起きると酒盛りの跡が無くAさんもいなくなっている。
寝ている間にAさんが片付けたのだろうか？ 冷蔵庫を開けてみようとしたがそもそも冷蔵庫が消えていた。
冷蔵庫の代わりにビールが落ちていた。
「大丈夫、僕のいうことを聞いて」どこからかAさんの声が聞こえた。
