魚の感想

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ジュラシック・ワールドの感想

感想の前にちょっと語る

ジュラシック・パークというのは罪深い映画である。

コハクの中に閉じ込められた蚊が吸った血液から、絶滅した恐竜のDNAを取り出して復活させるというアイデアは、原作者のマイケル・クライトンの完全な妄想ではなく、当時の古代DNA研究者へインタビューした内容から着想を広げたものであり、それゆえにリアルさのある素晴らしいSF的発想であった。

恐竜復活アイデアの現実味だけではなく、映画「ジュラシック・パーク」がアメリカ全土に公開される前日に、ネイチャー誌が中生代のゾウリムシの一種のDNAをコハクの中から得ることに成功したという論文を掲載する(1993年6月10日)という、今で言う“匂わせ”をして世間ウケを狙ったことは、「コハクの中から恐竜のDNAを取れば恐竜を復活させることができる」という夢を人々に抱かせるには充分だっただろう。

 

夢見る少年・少女だった我々は、大人になるにつれてジュラシック・パークの中の「嘘」に直面することになる。

仮に恐竜のDNAを手に入れたとしても6,500万年の年月ではDNAは劣化していてほとんど使い物にならない。足りないDNAの部分は他の生物で埋め合わせるというのがジュラシック・パークのアイデアだが、その方法とは何か……。そもそも手に入れたDNAが恐竜のDNAだと証明する方法が無いのである。

それに、ディロフォサウルスはエリマキトカゲみたいじゃないし、プロレスラーみたいに毒を飛ばしたりもしない。あとヴェロキラプトルはあんなに大きくない。

 

大雨の中でティラノサウルスTレックス)が車を襲うシーンの撮影をした後、スピルバーグが「この映画の主役はTレックスだから最後にTレックスを出さなきゃ!」と言ったせいで、ラストシーンで唐突にTレックスがラプトルに食ってかかる(文字通り食ってかかった)ことになってから約30年。僕らのTレックス像は不可侵領域に入ってしまっている。

Tレックスはこうあるべき」という思想のせいで、ジュラシック・パーク3Tレックスがスピノサウルスに負けたことに納得できなくなったりしているのだ。

 

そんな主役のTレックスについて、現実では、トカゲのようなウロコボディではなく羽毛が生えていたのではないかという議論があったが、まだ完全な決着がついていない。羽毛がモフモフだったことはないにしても、一部に毛が生えていた可能性も否定できないのが最近の説らしい。

これから先、従来のTレックスの造形を本格的に見直す必要が出た時、我々は素直に認識をアップデートできるのだろうか?

 

僕らはジュラシック・パークの夢の恐竜と、最新研究で明らかになっていく本当の恐竜との間のギャップに苦しめられているいい年した大人なのである。

そんな元恐竜キッズはジュラシックシリーズの最新作であり完結作である「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」を見てどういう感情になるのだろうか、少し怖い気もしたが、公開日に見にいった。

 

感想

結論として、まず恐かった。

日常生活の中で事故的に恐竜と出くわすことの恐ろしさがよく分かった。街の中でキックボードに乗っていたらいきなり食われるのとか嫌すぎる。

 

それにオーウェンさんが強すぎる。なぜ回を増すごとにゴリラ化していくのか。

あと、恐竜が正面を向いて目の前でバクンッ! というカットが多い。3D映像のアトラクションみたいだ。ビビリな僕は割とビクンビクンしていた。

 

ディテールを挙げるとネタバレになってしまうので書かないが、全体を通して「ちゃんと最新の恐竜トレンドを勉強したよ。それを分かってて俺たちはこれを出すぜ! だってお前らジュラシック・パークが大好きなんだろ!?」という感じだった。制作側は絶対に分かってやっている。

〇〇サウルスは絶対そんなことしないだろ! そいつ恐竜じゃなくてワニの仲間だろ! お前ら“これ”を出したいだけだろ! となったところがいっぱいあった。

 

だが、アホぶる一方でビジュアル的に華があるトレンド恐竜を出してきたりもするので、最新の研究内容等を絶対分かっててやってるはずなのだ、確信犯のはずだ。

特にTレックスが〇〇〇〇を食べるところとかは最新の学説を知っていないと出せない。分かっててやってやがるのだ、間違いと分かってて〇〇サウルスを出しやがった! しかも3体も!

 

我々が悩み続けてきた理想と現実の恐竜のギャップに対して「最新の研究成果の美味しいところだけ貰っていくが、“ジュラシック”は“ジュラシック”の恐竜で行くぜ」というメッセージを感じた。

それに対してジュラシック・パークで色々こじらせてしまった大人達には良い処方箋かもしれないという思いと、また苦しむ恐竜キッズが増えちゃうじゃないか! といういい加減にしてほしい気持ちが両方生まれた。

やはりジュラシック・パークは罪深い映画である。そして僕らをドキドキさせてくれるのだ。

 

総評

ダラダラ書きすぎた……申し訳ないので以下短く総評。

新規性のあるSF的なアイデアは無いのでSFで満たされるタイプの満足感は得られない。ただ、恐竜映画としては革新的な恐竜を出しているので、そこはよくぞやってくれたという感じ。

基本的にジュラシックシリーズのお祭り的な映画である。

ジュラシック・パークの1作目を見直して行くとより楽しめるかもしれない。ジュラシックシリーズが好きなら、恐竜の声とか大画面を楽しむために絶対映画館で見といた方が良い。

僕は好きです。