世は正に大量消費時代、資本主義はあの手この手で僕ら消費者に商品を買わせようとしてくる
だが、そんな誘惑には負けてはいけない
今日もコンビニへ行く。コンビニ……あぁ、欲望の“るつぼ”である。
だが今日はウーロン茶だけ買って帰る予定なのだ。飲み物コーナーから1番安い100円のウーロン茶を取ってレジへ……他のものに目を奪われてはいけない。
……でもちょっとだけ、ちょっとだけレジ前の惣菜コーナーだけ見てみるか……見るだけならタダだしな、うん。
おぉ、美味そうな揚げ物がたくさん並んでいるではないか……ジュルリ……
おっとイカンイカン。ダメダメ。こういうところで買うからどんどん太っていくのだ。
ウーロン茶のみ
ウーロン茶のみ
ウーむむっ! な……なんてこった!
から揚げが半額じゃないか! は……半額か!?
そうか、揚げられてからけっこう時間が経ってるんだな……なるほどねぇ〜、確かにちょっとふやけてるっぽいし、美味しそうかといえばちょっと微妙だなぁ……。
…………
……かわいそうに
このままこの子は廃棄行きだろう、わざわざ半額という売れ残りのレッテルを貼られて、もう誰も買ってくれないだろうな。
でもこの子は廃棄されるために揚げられたんじゃないんだよな……
この子も、人間に見捨てられたという点では、殺処分を待つ保健所の犬や猫と同じだ。
まぁから揚げだからもう死んでるけど……でも同じなんだよ。
生きているものだけじゃなくて、死んでいるものにも誰かが手を差し伸べてもいいんじゃないか?
「救ってやるか」
日本にはモッタイナイ(MOTTAINAI)という言葉がある。
そう、これは善意なのだ。
食欲ではない。
ウーロン茶に合うとか考えてない。
「良かったな〜お前、今日からうちの血肉となるのだぞ?」
とか考えながらレジに持って行ったら
「ア〜スミマセ〜ン、コレ、売レナイデス」
って外国人店員に言われた。
なん……だと……?
「スミマセ〜ン、ショミキゲン? キレテマス」
そんな……賞味期限が切れている……だと?
から揚げは既に死んでいたのだ。まぁから揚げだから最初から死んでるんだけど……
そして僕が「あっ、あっ、」ってうろたえている間に店員さんはささっとから揚げを店の奥に持っていってしまった。
そ、そんな……
マモレナカッタ……
この気持ちはなんだろう? 食欲を満たされない気持ち? いや、違う。これは無力感だ……
こういう時ってどうすればいいのだ?「賞味期限切れててもいいんで下さい!」とか言っちゃっていいのか? でもそれって店側からしたらすごく迷惑じゃないか?
あぁ、まただ。こうやってマゴマゴしている間に世界に置いていかれる。
「スミマセンデシタ〜。他ノ商品オモチシマスカ?」
代わりなんて意味がない。僕はあの子を救いたかったのだ。
あの子を救いたかったこの無力感は他のから揚げでは満たされないのだ……
「あっいやっ大丈夫です! あっじゃあ〜〜これを!」
なんかよく分かんなくなってレジ前のガム買った。