魚の感想

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約4ヶ月ぶりに髪を切りに行った。

時間に余裕があり興が乗っている時は自分で髪を切ったりしていた私だが、最近はなんだかんだでプロに切ってもらう方が事故らないしいいな、と思ってカット専門店で髪を切ることにしている。

 

散髪はカット専門店で充分だ。

福岡に引っ越してきたばかりの頃は、固定で行くことにする美容室を見つけようとして色々な美容室を試したりした(福岡の天神は美容室激戦区であり、ラーメン店よりも多い。あと服屋も多い、天神はほとんど美容室と服屋で出来ている)。

でも結局、どこの美容室も私には馴染まなかったので、最近は新境地の開拓はやめて博多駅近くのQBハウスにご厄介になっている。

 

QBハウスのようなカット専門店の良いところは、まず予約がいらないところだ。

いきなり行って券売機でカット券を買えば終わりだ。このラーメン屋のようなシステムは、コロナ対策で生み出された非接触システムと見せかけてコロナの前からこうだったことを私は知っている。

要は、効率重視なのである。

 

カット料金も1,000円ちょっとくらいで普通の美容室の半分以下だ。これもありがたい。もちろん普通の美容室よりもサービスが少ないからこの安値なのだが、じゃあその消えるサービスは何かといえば、おそらくシャンプーだと思う。

私は恥ずかしながらシャンプーに千数百円払うのを惜しむ人間なので、「だったらシャンプー要らないです」となってしまった。

そもそも、社会人になってからもたまに自分で髪を切って「自分で切ったらタダじゃん、すげ〜」などと言っている人間が、普通の美容室で3,000円弱を払うことに納得できないということを、これを読んでいる方々にはご理解いただきたい。

 

カット専門店の別の利点(これが最も重要だが)、美容師が話しかけてこない。

カット専門店の美容師は話しかけてこない。

日本三大話しかけてくる職業は、美容師、アパレル店員、バーテンだが、カット専門店の美容師は例外である。カット専門店の美容師との会話は「今日はどれくらい切りますか?」「こんな感じで大丈夫ですか?」の2つだけだ。このうち後者への返答は「大丈夫です」の一択以外、日本語には存在しないので、実質1つだけといえる。

 

いやまったく……普通の美容室の美容師はなんであんなに話かけてくるのか……私はそういう美容室に行っていたときはひたすら雑誌を読んでいたのだが、雑誌から少しでも目を離すと話しかけてくるので、すでに読み終わった雑誌を頭のページから精読していた。

寝たフリをする。という技も、美容師からの会話回避方法としてあるらしいが、どう考えても頭に刃物を向けられつつ椅子に座りつつ寝る。というのは不自然なので寝たフリというのはバレバレな気がする。「この人、コミュ障だから寝たフリしてんな」と思われるのは何だか悔しい。

いっぽうで、カット専門店の美容師はまったく話しかけてこないから、かなり楽だ。逆になぜ話しかけてこないのか? 私のことが気に入らないのか? いや、全ての客に話しかけていないはずだ。彼らはカット専門店に来るような客層の人間が軽いトークなど求めていないことを理解しているのだ。素晴らしいじゃないか。

 

そんなこんなで、前置きがクソ長くなってしまったが今日も私はQBハウスに行き、券売機で券を買ってあの美容室と歯科でしか見ない椅子に座ったのだった。

 

「どれくらい切りますか?」と聞かれ、「2cmくらいでお願いします」と事前に考えていた長さを伝える。

「その長さだとちょっと変になりますよ?」とかここで言われたりもする。そういう技術的なアドバイスも以外としてくれる。もしもそう言われたら「じゃあだいたいの長さで切ってください」と言えばいい感じにしてくれる。

あとは「全体的に長さを合わせていいですか?」とか「“す”いてもいいですか?」とか聞かれるので、これには機械的に「はい、はい、」と答えればいい。

 

あとはただ切られ続けるだけだ。この時間の私は体毛を切られるだけの生き物なので人間というよりも羊に近い。

トリミングされる犬にも近いかもしれないが犬はシャンプーするので、カット専門店はシャンプー無しなことを考えるとやっぱり羊に近い。

 

カット専門店のカットスペースには散髪をするだけの最低限のものしか置いていない。シャンプーやワックスやカラー剤の類は一切なく、ハサミ、クシ、バリカン、掃除機のみだ。このミニマルな感じには安価さよりもむしろ洗練さを覚える。

髪を切るという行為をひたすら最小化、効率化していくとこういう形態に行き着くのだろう。私はミニマリストでも効率厨でもないが、この洗練さには毎回感心するものがある。

 

ちなみにQBハウスでは鏡の下にモニターが設置されており、髪を切ってもらっている間、私はそのモニターを凝視している。モニターでは同じニュースやキャンペーン情報や週刊天気予報をループで流し続けている。結果的に時事ニュースや週間天気に詳しくなっていくのだ。

普通の美容室ではオシャレ情報しか手に入らないところだが、QBハウスでは髪を切ると同時に時事に詳しくなるのだ。素晴らしいじゃないか。

そんなことを考えながら髪を切られ続ける。美容師はバリカンに手を伸ばす。

 

バリカンがうるさい。バリカンうるさッ!! えっウソ? 前もこんなにうるさかったっけ? ウワーッ! バリカンうるさいから耳元に近づけないでくれーッ!!

 

バリカンの想定外のうるささに驚いてしまったが、10数分でカットは終わった。切り終わると掃除機の出番である。

髪を切った後に飛び散る髪の毛問題をカット専門店では「頭を掃除機で吸う」という、革命的だが客の頭をゴミや正月のお爺ちゃんの喉に詰まった餅と同列に扱うというぶっ飛んだ方法で解決している。

これは普通のオシャレ美容室では到底マネのできない芸当である。オシャレ美容室ではドライヤーで熱風を思い切り頭に当てるのに対して、カット専門店では掃除機で吸う。原理はほぼ同じなのに活躍の場が全然違うのも面白い。

 

というわけで私も頭を掃除機でブォォォ! と思い切り吸われるわけだが、これが案外気持ちいい。

ちなみに、QBハウスではカット道具の棚の下に小さな穴が空いており、その穴で床に散った髪を吸い込むような作りになっている。美容師が客の髪を掃除する時間を短縮するための工夫だ。本当にどこまでも効率化されている。

 

最後に鏡で後ろを見せられて「これで大丈夫ですか?」と聞かれるが、前述したように、この言葉に「大丈夫です」以外を返答する日本語は用意されていないので「大丈夫です」と答えた。

こうして僕は4ヶ月前の髪型に戻った。あと、週間天気と時事に少しだけ詳しくなった。