魚の感想

twitterの外付けの感想置き場として使っています。

監視員

なぜこんなにも見つめられるのか分からない、僕が何かしたのだろうか? 美術館は素人だから分からないが、監視員というものは客を凝視することが仕事ではないはずだ。

部屋に僕以外の客がいないせいだろうか? 他に注意するべきものが無いから? チラ見したら、先刻と同じくまた目が合ってしまった。さっき特別展示で見た、やたらに眼力の強い肖像画のような目だ。

そもそもなぜ2人いるのか、僕をずっと見ているひとりは立ちっぱなしなのに、もう一人の監視員は暇そうに文庫本なんか読んでしまっている。どうも気になって仕方ないが一通り作品を見たいので努めて気にしないことにする。

僕は部屋の中央に鎮座している現代的な像を見た。「雄鶏」とタイトルにあるその鋳像はタイトルが無ければモチーフが分からなかっただろう。よく見ると金属製の光沢の表面に手垢のようなものが付いている。なるほど、この像は結構触られてしまいがちなのだろう、だからこんなに監視されているのか。

僕は無害性をアピールするために両手をポケットに突っ込んだ。そして像の周りをぐるっと回ってよく見てみる。鋳像はその金属光沢の表面で座っている監視員とその他の作品と僕を歪んで映した。