それは残暑に苦しむある夜だった。
シャカシャカと何かが擦れる音が寝室の闇に響いてやたらと耳障りだった。
実はその音には数日前から気付いていたのだが、その日の音は以前までと比べると無視できないほど大きいものだった。
まるで長年溜め込まれたストレスが、特に大きなきっかけもなく急に限界を迎えて体に異常を起こすように、なんの前触れもなくシャカシャカ音は僕の安眠を妨害するまでに大きなものになったのだった。
いや、シャカシャカ音だけではない。音の中に混じる金属同士が擦れるような不快な音が確かに存在する。
その音は単に耳障りなだけではなく、聞いていると不快感よりも恐怖感を煽られるような音であった。
明らかな異常音。
この音はどこから…?
時刻は深夜、季節は夏の終わり。連想したのはこの夏作業BGM代わりに聴きまくっていた怪談の一幕だ。
この音の正体が掴めなければ、それは霊現象を意味したであろう。そうやって新たな怪談世界が一つ生まれるのだが……まぁ正体不明なんてことはなく普通にこの音の正体は扇風機でした。
扇風機がねぇ〜! 安いやつを買ったら、まだ2年しか経ってないのに、もうガタが来たらしくてシャカシャカシャカシャカうるさいんですよね……
数日放っておいたら、シャカシャカ音に混じってキーキー音までしてきて「これ壊れて寝ている間に羽が外れたりしないか?」って不安になっちゃったんですよね(まぁ外れたりはしないんだろうし、外れたとしてもカバーまでぶっ飛ばして寝ている僕を羽が切り刻むことは万に一つも無いと思うんですが)。
とりあえずうるさくて寝れねー!!
というわけでAmazonでグリスを買って自分で塗ることにしました。今日はその話です。
以下作業
とりあえずグリスといえばスプレータイプの赤いやつのイメージがあったので、Amazonでそれっぽいのを買いました。
グリスを買ってしまえばあとは付けるだけじゃね? と思っていたんですが、よく考えたらどこにグリスを吹きかければシャカシャカ音が止まるのか分かりません。
そこで仕方なくベランダに扇風機を出して一度分解することにしました。面倒くさい……
分解するといっても機械に詳しいわけでは無いので、カバーと羽しか外せません。カバーを外した穴から小学校の理科の実験で使ったヤツの10倍はデカそうなコイルが見えます。
この状態で一度スイッチを入れてみると、ネジのような突き出た金属部分だけがグルグルと意味も無く回り、まるでデカいから使い勝手の悪過ぎるドリルみたいだなと思ったりしました。
ところでこの状態まで分解して回してみても、どこの部分がシャカシャカ音を生み出していた患部なのか分かりません。
ドリルっぽいネジ部分を回してもシャカシャカ音がしないのです。おそらくシャカシャカ音は羽を接続してネジ部分にある程度重さが掛からないとしないのでしょう。
でもまぁこのネジ部分がシャカシャカ音の患部じゃなかったら完全にお手上げなので、もうとりあえずこのネジ部分の奥と全体にグリスをぶっかけることにしました。
ここの奥と……
ネジ全体ね……
せっかく分解したので2年分の汚れを掃除します。
特に前部分のカバーが汚れていたのでわざわざ写真撮りました。
自分の部屋の空気を風に乗せて針金に2年間当て続けるとこうなるのか……
ウェットティッシュだけで綺麗になった。
掃除も終わったので全ての作業が完了したとみなしましょう。
もう一回組み立てていざ回転!
……ブゥ〜〜〜ン
おっ?
……ブゥ〜〜〜〜〜〜〜ン
ん〜? 元々こんなんだったっけ?
そもそも安い扇風機だから羽音が大きくてよく分からないな。
まぁでも、明らかにシャカシャカやキーキー音は無くなってるよね……うん! 無くなってる!
シャカシャカキーキーが消えたのでヨシ! ヨシとします!!
やったぜ大成功!
という感じで扇風機にグリスを塗りました。まだまだ残暑を感じるので、もう少し活躍してもらおうと思います。
以上、作業でした。