こんばんは、最近なぜか早朝に一瞬だけ目が覚める魚の精巣です。
今日は夢の話をします。現実には何もブログに書けるような色味のあることが無いので夢の話ばっかりでごめんね。
(そういえば夢の中は色が無い人もいるらしいけど、僕の夢はフルカラーだな。)
何も無い白い空間に立っているところからその夢は始まった。本当に白いだけで何も無いので、どれくらい広いのかもよく分からない。
「白いな……? 夢か?」と僕は思った。
たいていの夢の中で、僕は自分が夢の中にいることを自覚できている。いわゆる明晰夢というやつだ。
すると、足元になにかの気配がある。僕がその気配に気づいた瞬間、その生き物は僕の視界に映る前に、先手を打つように鳴き声を上げた。
「ぷごっ! ぷごっ!」
あっ、この声には聞き覚えがあるぞ……! ”プースケ”だ! プースケがいる!
”プースケ”というのは昔実家で飼っていたパグ犬だ。プースケは7,8年ほど前に死んでしまった。10数年生きたので犬の寿命的にはそれなりの高齢だったが、正直僕はプースケがそんなに長生きするとは思っていなかった。
その理由の一つは、プースケがかなりの肥満体だったからだ。散歩に連れて行くとすぐ疲れてしまって休憩しながら歩いたし(むしろ散歩を嫌がっていた)、息をするときも「プシュ~プシュ~」と空気が狭いすき間を通り抜ける時の音が出ていたし、鳴き方もなんか変になっていて「ぷごっ! ぷごっ!」という小さいブタみたいな声を出していた。
夢の中の鳴き声はまさしくプースケのものだった。とても懐かしい。
死んだペットが夢の中に出てくることが本当にあるとは!
僕はすぐに下を見た……
そしたらそこにこんなヤツがいた……
あれ? ……なにこれ?
えっ、パグってこんなんだったっけ?
パグってもっとこう
こんなんじゃない? 全然シワが寄る場所が違うんだが……
これ本当にプースケか?
>「ぷごっ! ぷごっ!」
あっやっぱりプースケだ! 絶対プースケだ!
夢の中のプースケ(パグ)は僕の記憶力の影響を受けてパグとは思えない全体的にブヨブヨした肉のシワが寄っている謎の生き物に変貌していた。
ピクミンの敵みたいだ。もしくはデカいハムスターとオナホの間の子供みたいだ。
だが形以外は紛れもなくプースケなのである。
「プースケ~プースケ~」と昔のように呼ぶと、昔と同じように体を足にこすりつけてくる。プースケの毛は抜けやすかったので、短い毛がズボンにびっしり付く。
プースケは背中に爪を立ててゴシゴシすると気持ちいいのかよく喜んだ。同じように夢の中でも背中を掻くと「プキプキ」と鳴いて喜んだ。
プースケはしゃがむと飛びついてくる犬だった。しゃがむとやはり飛びついてきた。僕が夢の中で着ていたカッターシャツはやはり毛だらけになったが、夢の中なので別にいい。
しゃがんで近くで顔を見ると、やはりパグ犬の顔ではなく僕の想像力の無さが生み出したオナホみたいな犬には変わりなかったが、目は生前のプースケと同じだった。
プースケは右目を失明していた。夢の中のプースケも、生前のプースケと同じように右目が不自然に濁っていた。
プースケが右目を失明したのは僕のせいだ。
散歩中に僕が転んで、転んだ拍子に蹴りあげた石が右目に当たった。
プースケが「キャン!」と吠えて右目から血が流れた。
動物病院で診てもらうと、角膜が完全に破れていて、その時点ですでに失明していた。できることは手術で傷口をふさぐことだけだという。
病院でそれを聞いたとき、僕は気分が悪くなったと言って外に出た。病院の駐車場で何も考えられずボーッとしていた。病院の薬の臭いと罪の意識に耐えられなかった。
こんな大怪我をして、犬という生き物は正常に生きていけるのだろうか? もの凄いストレスを受けるに違いない。きっとプースケの寿命はほとんど消えてしまっただろうとこの時思った。
だから僕は、プースケが長生きするとは思っていなかった。自分のせいで死んでしまうんだと思っていた。
でもプースケは僕の予想に反してそれから何年も生きた。右目を失っても相変わらず食欲は衰えず、祖母があまり量を考えず与える犬用ジャーキーをバクバク食べるものだからどんどん太っていった。
家族はプースケが失明したことは自分のせいではないと言ってくれたが、わざとではなくても自分のせいだと思う。
家族は僕を責めなかったし、プースケも僕を責めることはなかった(犬なので責めようがない)。だから僕の罪の意識は宙ぶらりんになって、プースケの右目を見るたびに胸の中に何度も降りてきた。そしてだんだんそれは罪悪感から嫌悪感に変化していった。
そうだ、正直に言おう。僕はプースケが長生きしないと思っていたんじゃなくて、心の奥底では早く死んでしまえと思っていたんだ。そうすればもう、あの右目を見なくて済むから。
自分の本心に気付いたのはプースケが死んだ後だった。プースケが死んで何年か経ったあと、どこかでホッとしていた自分に気付いたからだった。
こういうことから見ても、自分がきれいな人間ではないことは明らかだと思う。もしもプースケと僕の立場が逆だったら……と思うと、ふざけんじゃねぇいい加減にしろよって感じだ。
そんなプースケが夢に出てきた。
もしも夢に意味があるとしたら、これはどういう意味なんだろう?
分からないが、夢の中のプースケは変な形をしていた、でも目は同じだった。
そして懐かしくて、可愛かった。
夢から覚めた後、僕は罪悪感と自分の冷たさを思い出したが、それでも寂しさがいくらか勝っていた。
本当に勝手だと思うができるならもう一度プースケに会いたい。プースケがいないってこんなに寂しかったんだ、ちゃんと好きだったんだ。
夢を見てから数日後、街で散歩しているパグ犬の子犬を見かけた。
その子犬は横断歩道を渡りながら飼い主の足に飛びかかりまくっていて、飼い主がすごく邪魔そうにしていた。
「あれ、プースケも子犬の時あんな感じだったな? パグ犬ってみんな”ああ”なのか?」
次もしも夢にプースケが出てきた時のために、僕は横断歩道を渡り終えたそのパグ犬の姿形をしっかり憶えておこうと思った。