魚の感想

twitterの外付けの感想置き場として使っています。

芋焼酎もいいもんだ(芋だけに)

今日はお酒の話をしようと思う。

 

先日、仕事終わりに会社の飲み会(飲み会と言ってもまだコロナが怖いので少人数の会だったけど)があった。

僕はいつものように定時ギリギリまで仕事を振られ続けていたので開始に間に合わず、遅れていくと、既に始めていてくれたのでテーブルの上には既に酒が用意されていた。そこにボトルで置いてあったのが芋焼酎の「さつま島美人」であった。

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 なるほどぉ、芋焼酎か……

 

福岡の人は僕の観測した限りだと焼酎は芋焼酎が好きだ。福岡に越して間もない頃、これが僕の中では意外であった。というのも、九州の人達は南に行けば行くほどキツイ酒を好むと自分の中で勝手に思い込んでいたからだ。

 

九州以外の人達から見れば、九州の人間は酒に強く豪快なイメージがあるかもしれないが、決してそんなことはない。実際僕は酒に弱く、チビチビっと飲むのが好きだ。

我々九州のメンズは九州男児という言葉をプレッシャーに感じている。

 

しかし、そんな九州の人達でさえ、鹿児島以外の県の人達は鹿児島県民の酒の強さはヤバイという共通イメージがあるように思う。(これを鹿児島出身の人に伝えると「そんなことはない」と言われるのが常なのだが)

 

 熊本は米焼酎

言い忘れていたが僕の出身は熊本で、就職で福岡へ来た人間だ。

 

熊本県民は一体何を飲むのかと聞かれたら「米焼酎」と答えるのが適切だろう。なにせオッサン世代の家であればどこでも「白岳」の紙パックが置いてある。

 

熊本県民がなぜ米焼酎を好むのかハッキリとは分からないが、おそらく酒造の影響だろう。「白岳」を作っている高橋酒造は県内にある。もちろん歴史的な理由もあるのだろうが、それを論じるほどの知識は僕にはない。

とりあえず熊本県民は「焼酎=米」のような風土の中で暮らしていると思ってもらっていいと思う。

 

 米焼酎芋焼酎よりもスッキリとしていて飲みやすい。あと匂いも違う、芋焼酎の方がアルコールが濃いような匂いがする(でも度数はあまり変わらない)。

好みの問題もあると思うが、米焼酎に慣れている熊本の人間からすると芋焼酎の濃さがキツイようで、僕の母親はその典型だった。

芋焼酎を飲んだら次の日臭くなるから芋はイカン!」

とか言っていた。普通に考えてどんなお酒であれ飲んだ後は臭くなるのが当たり前なのだが、母親にとっては芋焼酎を飲んだ後の臭いというのはまた別のものだったのだろう。

 

 長島の実習

もう一つエピソードがある。

学生の時、鹿児島県の長島町で課外実習があった。さっきの写真の「さつま島美人」を作っている長島研醸がある島で、なんと島内限定販売されている「さつま島娘」という銘柄がある島なのだ。

 

島内限定という響きにやられた僕は実習の自由時間を利用して合宿所から「さつま島娘」を販売している酒屋まで炎天下の中を歩き、ボトル瓶を抱えてまた炎天下の道を戻るということをやった。

 

僕はその「さつま島娘」を晩飯の後の自由時間にみんなと分けようと画策していた。島でしか買えないお酒をわざわざ歩いて買ってくるという、こんなにも気の利いた事をやってしまったのだから友達からヒーローのような扱いを受けるに違いないと歩きながら思っていた僕だったが、いざみんなに「さつま島娘」を見せびらかすと

「それ、お前飲むの?」

みたいな、期待していたものとは違う反応だった。

 

どうやらみんな僕ほど”島内限定”という言葉にときめかなかったらしく、むしろ芋焼酎だからキツイだろうなと冷静に判断していたらしい。

僕はその場で「島内限定やぞ! 飲まなきゃ損だろ!!」と勢いづいてみたものの、実際に飲んでみるとかなりキツイ芋焼酎だったので1~2杯でギブアップしたことを覚えている。

 

誤解しないでほしいのは「さつま島娘」が微妙だったとかそういうことではなく、お酒が飲めるようになりたての調子こいた学生が、自分の地元とは別の風土で培われてきたその土地のお酒に挑んだ結果ボコボコにされたという話なのである。

 

事実、数年後、今度は教授たちのお手伝いという形で全く同じ実習に参加したとき、「さつま島娘」と再会することになり、その時の僕は自由時間を楽しむ後輩たちの中で一人ポツン寂しくテレビを見ながらゆっくり「さつま島娘」を飲むということをしていた。

この時の僕は「さつま島娘」を飲みながら過去の清算のようなものをしている気分になった。

そして、実習を楽しんでいる後輩たちと自分の比較に時間の不可逆な流れを感じてメランコリックになっていた思うが本当は輪に入れてもらえなくて寂しかっただけである。誰か話しかけてよ。

 

 風土って……

こういった色んな経験や環境から僕は「鹿児島=芋焼酎=キツイ」という印象を持つにいたり、それが「九州の人達は南にいけばいくほどキツイ酒が好き」というイメージを作っていたのだ。

 

しかしこのイメージは就職で福岡に来てから打ち砕かれた。実際には福岡県民も芋焼酎が好きで、自分のいた熊本は芋焼酎(鹿児島)と芋焼酎(福岡)にサンドされていたのだ!

サンドされているならば、熊本県民も芋焼酎のことを好きでもおかしくないような気がするが、なぜかそうはならない。ここらへんがお酒という風土の面白いところだなぁと思う。

 

話を現在に戻す。長いことお付き合いいただきありがとうございます。

 

そういった僕の浅くはあるが色々あった人生経験が、飲み会に遅れてやってきた時の「なるほどぉ、芋焼酎か……」に集約されていると思っていただければ嬉しい。

 

実は、僕は「さつま島美人」を飲んだことが無かった。

 

どうしようか? 正直仕事終わりなのでビールを期待していたんだけど、目の前にあるし、これ飲んだ方が場的にはいいよね……

 

よし、今日はこれを飲もう……!

 

氷を入れる。ロックはキツそうなので水割りにする。でもあんまり薄味の酒は好きじゃないので気持ち多めに「さつま島美人」を入れる。自分の好きな酒の味に気付いたのは何歳の頃だっただろうか? 確実にあの実習の後だったと思う。分量なんてぶっちゃけよく分かっていないが水を入れる。混ぜる。かんぱ~い、すみません遅れて~。飲んでみる。

 

あっこれ美味いじゃないか。

 

「さつま島美人」、とても美味い。

 

お酒が美味しくて話が弾んでしまい、その会では自分の弱みや仕事の悩みを話し過ぎてしまった。

でも、まぁ、いいや。うん、いいや。

 

最近自分が福岡という土地の風土にだんだん合わせられるようになってきた気がする。その土地に行ってその土地のものに好みをチューニングしていくのは楽しい。

短期間でもいい。もっと色んなところに行ってみて色んな風土を体験してみたい。

たぶんもう一度長島に行ったら、僕は今度も歩いて「さつま島娘」を買いに行くと思う。

 

土地の風土っていいよねって話でした。