今週のお題「卒業」
こんばんは、最近暗〜い内容のブログばっか書いてる魚の精巣です。
暗い内容ばっか書きすぎたので、たまに明るい明るい話でも書きたいんですが実際なかなか明るい話など無いものです。
というわけで、はてなブログのお題箱なるものに手を伸ばしてみました。今週のお題は「卒業」らしいです……卒業の話、あるにはあるので書いていこうと思います。
合唱 男子 おもんない
中学の卒業式の話です。僕たちの代の卒業式の合唱は、「旅立ちの日に」「仰げば尊し」といった定番の何曲かと森山直太朗の「さくら」でした。
卒業式に流行りの歌を合唱にする文化って今もあるんでしょうか? とにかく、僕たちの代では「さくら」を歌うことになったのです。
今思えば、「さくら」ってそもそも独唱なのに合唱で歌うって変ですね。
合唱って最悪じゃないですか、クソつまんないじゃないですか、特に男子って面白くないんですよ、声が低いから。
これも全て声変わりのせいです。おのれ声変わりめ。声変わりのせいで男子は主旋律を歌えずに卒業していくんですよ、このつまらなさ!
女子が「旅立ちの日に」の最後に
この広い〜この広い〜大ぉ〜⤴︎空に〜〜!!⤴︎⤴︎
ってめちゃくちゃ盛り上がってるときに、男子は
この広いーこの広いッ大ぉ〜⤵︎空に〜⤵︎
ってすごいテンション低くなってるんですよ、なんだよ「この広いッ」って。もう我々男子はね、飛び立ってないんですよ……男子はね、ジャンプ台。飛び立っていく女子を下のベース音で支えるただのジャンプ台。
そんな感じで合唱の時の男子は面白くない。だからクラスごとの自主練習とかで女子に「ちょっと男子真面目に歌ってよ!」って怒られても全くやる気なんて出ない。だって真面目に練習しても飛び立てないんだもん。ジャンプ台としての強度が高まるだけなんだもん。
でも「さくら」は違った。「さくら」では我々男子の輝く瞬間があったんです。少なくとも僕の周りの5人は……
主旋律 歌っちゃう?
森山直太朗の「さくら」は前述した通り、もともと合唱曲ではないので、主旋律と副旋律のパート分けがはっきりしていませんでした。今となっては誰がどういう風にパートを分けたのか知る由もありませんが女子(ソプラノ、アルト)が主旋律として一般的な「さくら」のを歌い、男子(テノール、バス)が副旋律として低い音程を歌う事になっていました。
そして僕はテノールでした。
テノール(男子)はアルト(女子)に近く、頑張ればアルトぐらいの高さの声も出せるんですよね、なので同じテノールの友達と
「俺らアルトいけるんじゃね?」
「ていうか俺『さくら』原曲キーで歌えるし」
「女子よりも俺らの方が声もデカイし、森山直太朗に近いだろ」
みたいな何気ない会話をしていました。(合唱に森山直太朗っぽさとかあんまり関係ないけど)
そして本番の卒業式間近の練習で、じゃあ本番通りに並んで(パートごとに並ぶ)最初から通しでやりましょう。となった時に、何人かで共謀して「こっそりアルトに混ざっちゃおうぜ」と企てたわけです。
まぁバレましたよね。一瞬でバレました。
「男子、何人か女子のところで歌ってたわよね?」って音楽の先生にツッコまれましたよ。だって女子の中に男の声入ってんだもん、声変わりしたヤツが……
でもこの時の音楽の先生がとてもノリがいい人で
「男子の中で、何人かアルトになりたい人いる?」
って聞いてくれたんですよ。「えっ!?」でした。「俺たちでも主旋律になれるの!?」です。
そして、こっそりアルトに混ざろうとしていた僕含む5人は、サビのところだけアルトの主旋律をやってもいいということになったのです! やったー!!
先生が「君らは特別パートだから他の邪魔にならないように固まりなさい」ということで、僕ら5人を十字の並びに固めました。僕はその真ん中でした。
もう僕らはウキウキです。
「おい! 堂々と普通のサビを歌えるぞ」
「俺らは特別パート! “選ばれしテノール”!」
「俺、絶対に音外さない! お前ら音程分かんなくなったら俺に合わせろよな!」
「絶対女子には負けない! 俺ら5人で女子超えよう!」
「いや実際イケる! 俺らで『さくら』持っていこう!」
みたいな感じです。浮かれまくりかっ!
卒業式 アクシデント
そして卒業式本番、卒業式らしいイベントをひと通り終えたあと合唱タイムに入ります。
「いよいよだぞ……」
僕はちょっと緊張していました。
いざ、体育館のステージに並びます。並びは我々特別パートの十字フォーメーションを含んだ陣形。このまま「さくら」までノンストップです。
定番曲を歌っていき、そして「さくら」へ……
しかし、この時、異変が。
あれ? 前のS君、なんか体が小刻みに震えてね?
えっ、S君泣いてない? ……
えっS君まさか……
さっき歌った「仰げば尊し」で感極まっちゃったの?
なんとテノール十字軍の一角であるS君が後ろからも分かるほどグズグズに泣いていたのです。
しかもそれだけではありません。僕の両脇からも鼻をすする激しい音が……
T君とN君、お前らもか……!?
なんと僕の両脇にいるT君とN君も「さくら」を歌い始める前から泣いているではありませんか!
えぇ〜そんなに!? 「仰げば尊し」ってそんなに胸に来る歌だったの? 恐るべし「仰げば尊し」。
こんな状態で「さくら」を歌い上げることができるのでしょうか……無情にも伴奏が始まってしまいます。
僕らは きっと待ってる 君とまた会える 日々を
T君「んボォ〜くぅらハァ〜」
ダメだーーーッ!!!
ダメだ!! 歌えてねぇ! これ無理だ! ヤバイ!!
歌いながらめちゃくちゃ動揺する僕。しかも更なる事実にこの時気付きます。
F君(後ろ)「さっさく、さくらぁ〜並っ並木の……」
後ろもめっちゃ泣いてるーーーッ!!!
真後ろだったので歌い始めるまで気付かなかったのですが、後ろのF君も嗚咽混じりになっていました。テノール十字軍は壊滅して僕1人になっていたのです。
というかなんで俺だけ泣いてないんだ? もしかして薄情な人間なのかな……?
などとこの時は思ってしまい落ち込んだ記憶があるのですが、いま思えば緊張していたんだと思います。
とはいえヤバイです。サビが近付いて来ます。
どんなに苦しい時も 君は笑っているから
苦しい。確かに苦しい。だが、あの日僕らで「さくら」の主旋律を歌い上げると決めた誓い。それを容認してくれた先生。テノールではなくバスであるがゆえにテノール十字軍に入れなかった友達の気持ち。全てを背負ってここに立っているのです。
霞ゆく 景色の 中に
たとえ1人でも、自分1人でも、歌い上げなければならない。主旋律を、男子が。
あの日の 唄が 聴こえる
僕「さくら! さくら! いざ舞い上がれ!(あっっ!! 歌詞間違えた!!!)」
舞い上がって歌詞を間違えました。デカイ声で
その後は、まぁ、もう、ね……恥ずかしさでいっぱいいっぱいでしたよ……最後まで泣きませんでした。
あの時のテノールだった他の4人、いまどこで何をしてるんだろうか? 卒業してしまうと、どうしても疎遠になってしまいますよね。
もしかしたら卒業式のこと覚えてないかな? 覚えてるといいな……
さらば友よまたこの場所で会おう
さくら舞い散る道の上で