魚の感想

twitterの外付けの感想置き場として使っています。

会社サボりました

 

昨日寝たのは何時だったか、だいたい1時30分くらいだった気がする。いつもより30分程度早い就寝時間だ。寝る前に「シメジシミュレーション」という少女終末旅行のつくみず先生のマンガを読んでいた。作中では夢の中の話が多く、「夢は見る個人のものだ」というセリフで「う〜ん、確かにそうだ」となっていた。今日はなんだかいい夢を見る気がする。そう思えたのがいつもより30分早く寝たひとつの要因かもしれない。

 

電話がかかってくる。

現在時刻、9時7分。弊社の始業時刻、9時ちょうど。圧倒的寝坊。

「どうしましたか?」上司の声、半笑い。

「あっ、すみませんちょっと……調子が悪くて……10時に出社します」

「無理せず来てくださいね」

 

なぜかスマホの音量がいつもよりかなり小さくなっていた。おそらく原因はコレだと思う。くだらない凡ミスだ。

 

実は先週も寝坊していて、その時の理由もスマホの音量だった。同じミスを何度も繰り返してしまう、日常生活だけではなく業務でもだいたいそんな感じだ。たぶん治らないんだと思う。

 

10時出社に間に合うか間に合わないかのギリギリで準備が終わりスーツを着た。なんとかなりそうな安心感が出たらちょっと疲れたので座った。そしてその時、異変が起きる。

 

立ち上がれない。一切立ち上がれない……

 

準備万端であとは会社に行くだけなのに、座っているこの場所から全く動けない、トイレに行く気も起きない、さっき用を足したばっかりだからだけれども……あのドアを開けて、急いで会社に行って、「すみません」って謝らないと行けないのに、立ち上がれない。

会社に行きたくない。

 

本当に会社に行きたくない。会社に行きたくなさ過ぎて感情が制御できない。ただの寝坊ということはバレてるし、どう考えても自分に非がある遅刻なのに会社に行きたくないという感情か強過ぎて自分は悪くないのでは? という気分になってきた、なんだかイライラする。

 

立ち上がれず、ドアを見つめたまま数分。

そうだ、走れば10時に間に合う時間までに気持ちを落ち着けよう。と考える。

 

たぶんコレがいけなかった。あまりにも大きな会社に行きたくないという感情を片付けるのに、自分の苦手な朝の時間帯と与えられた数分程度の時間では全く足りず、あっという間に「走れば10時に間に合う時間」が過ぎた。

 

あっもうダメだ

いや、タクシー使えばなんとか

タクシーが捕まらないかもしれない

10時に間に合わなくてもいいんじゃないか?

10時に間に合わないとしたら何時に間に合うの? 何時に立ち上がれるの?

まず、10時に間に合いませんって言わなきゃいけない

怒られそうだ……

10時には間に合わなかったけど、急いできましたって感じが出る時間になんとか着けば、間に合いませんって言わなくてもいいのでは?

それは最悪でも10時20分くらいだろうか

でも結局怒られるんだろうな……

怒られるから会社に行きたくないけど会社に行かないと怒られる

タクシーしかない

でもタクシーが捕まらないかもしれない

 

そんなことを考えていたら10時4分になった。

 

あっ終わった

無理だ

まず立てない、まず立てない

なんで立てないんだろう

ゴミカスうんこウジムシ責任転嫁クソバカ無意味社会不適合

どうしよう

電話しなきゃ

すみません遅れますって電話しなきゃ

何時にしよう、10時半?

10時半は無理だろ、絶対無理だ

11時? 11時も無理な気がする

なんで? なんで無理なの?

9時に起きて10時に電話して11時に出社するのがなんで無理なの? って追及されたらなんて答えればいいの?

なにかうまい理由を考えなきゃいけない

今ごろ会社の人は、あいつまだ来ないの? みたいなこと考えてるんだろうな

あいつまだ来ないの? なにかあったのかな? もしかしてまだ寝てるのかな? それとも最悪10時20分には来るのかな? もう一回電話したほうがいいかな?

そうだ、早くしないと電話がかかってくる

電話がかかってきたらなんて答えればいいの?

 

10時15分になった。

 

無理だもう無理だもう分からない

電話がかかってくる

電話がかかってくるぞ早くしろよ

電話がかかってくる前にこっちから電話しないといけない

調子悪いって言おうそして半休にしてもらおう

……午前休と半休ってどう違うんだろうか? なんとなく午前休だと12時に出社しないといけない気がする。やっぱり半休にしてもらおう

申し訳ございません。体調を崩したみたいなので可能なら半休をいただいて13時に出社したいのですが……

これでいこう

電話だ、電話をかけろ

早く電話しないと電話がかかってくる

申し訳ございません。体調を崩したみたいなので可能なら半休をいただいて13時に出社したいのですが

大丈夫だろうか……

13時に出社できなかったらどうしよう

それは後で考えろ、とりあえず電話がかかってくるんだぞ

電話がかかってくる前に電話しないといけない

申し訳ございません。体調を崩したみたいなので可能なら半休をいただいて13時に出社したいのですが

通話ボタンを押せ、通話ボタンを押せ

今にも電話がかかってくる。もう10時17分だ

電話がかかってくる急げ

押せ

電話がかかってくる

 

押した。

 

「あっ、すみません、あの……ちょっと調子が出なくて……半休にできたら半休がいいのですが……」

「無理しなくていいよ。半休じゃなくて休みにしたら?」

「あっ、じゃあ……休みでお願いします……」

「なにかあった?」

「あっ、ちょっと最近、色々厳しくて……追い込まれ気味です、あはは」

「いま流行ってるコロナウイルスとかじゃないんだね? 分かった」

「あっ、でももしかしたら……分かんないです。ちょっと測ってみます」

「いやいや大丈夫。仕事だって完璧にこなさなくてもいいからね、今日は休んだら?」

「あっはい、すみません。今日は休みます……」

 

電話をしながらいつの間にか立ち上がって、体温計を取りに行っていた。あんなに立ち上がれなかったのに。

 

電話を切った後、スマホを少し遠くに投げた。投げたといっても壊れるとまずいので、積まれた衣類の上に落ちるように優しく放っただけだ。とりあえず今はあまり画面を見たくない。

 

手から体温計が落ちて床で音を立てる。まだ体温を測る前だったが、どうせ熱などないのだろうし、もうどうでもいい。

 

あぁ、もしかして今日は会社に行かなくていい……?

 

安堵、明日以降の不安、自分への失望、謎の達成感、色々とごちゃ混ぜになった後、いきなり足の力が抜けて膝から崩れ落ちた。

「膝から崩れ落ちる」という言葉通りの崩れ落ちっぷりが自分でちょっと面白くなり、今日は会社に行かなくていいからこのまま床と同化しようと思ってスーツを着たまま倒れこみ、そのまま10分くらい泣いた。

 

今日はその後頑張って着替えてラーメンとかマックとか食べに行った。それでおしまい。

 

 

明日からどうしよう?