魚の感想

twitterの外付けの感想置き場として使っています。

バーにいた80%冴羽獠のオッサンとEDの入りみたいなセリフを吐いたオバサンの話

 

「俺は冴羽獠なんだよ! 俺の性格はほぼ冴羽獠なんだ!」

 

冴羽獠(さえば りょう)っていうとアレである。シティーハンターの主人公である。そんな、自分はマンガのキャラと同じだ! ってデカい声で言ってるイイ歳したオッサンがなんかバーにいた。

 

話し相手もイイ歳したくらいのオバサンだった。なんとなく、空気的に、おじさんおばさん世代特有の男女飲み友達のような感じだった。

 

「俺はさぁ、兄貴の本棚からシティーハンター抜いて読むのが好きだったんだよ。マンガを買ってもらえるのは兄貴だけでさぁ、だからシティーハンターも兄貴のものだったんだよ。兄貴に見つかると怒られるからさぁ、兄貴がいない隙にコッソリ読まなきゃいけなかったんだけど、それがスリルがあって良かったんだよ」

 

酔ってんなぁ~

 

そういう僕もかなり酔っていたが、ハイボールのグラスを肘で何度も倒しそうになっている友人のお世話で大変だった。

この新婚の友人は、奥さんと一緒にご飯へ行く予定だったのに奥さんの仕事が忙しくて予定がキャンセルになってしまったので、僕へ急に連絡してきた。

まぁつまり、奥さんがかまってくれないからヤケ酒に付き合わされているのだ。

 

友人は酔いつぶれていまにも”粗相”をしそうなので注意しなければならない。こういうときは酔っていてもどこか冷静に注意力が働く、そしてそういう頭には他人の話がよく響いてくる。

 

「それで冴羽獠に惚れたってワケ、俺は男だけど、惚れたね。冴羽獠はカッコイイ。そこから俺の人生の目標というか、理想の漢は冴羽獠になったってわけ。もうずっと目指してるからね、俺の8割は冴羽獠なんだよ

 

「ふぅ~ん、アニメしか分かんないかも」

 

オバサンの食いつきはかなり微妙だった。さっきまで映画のボヘミアン・ラプソディの話を自分でしていた時とはえらい違いだ。

 

このご時世に(とか言ったらこのオッサンに怒られそうだが)シティーハンターの映画があっているので、その流れでこの2人の話はボヘミアン・ラプソディからシティーハンターに飛んだみたいだが、オバサンにとっては参った展開になっているようだった。

 

ちなみに僕もシティーハンターは小さい頃にアニマックスで見たアニメ版しか知らないけれど、結構好きだ。特にEDの「Get Wild」がイイ……めっちゃ好きだ……。

 

映画でシティーハンターを見るのはなかなかレアな体験だと思えるし、「映画館で『Get Wild』聴ける機会ってもう来ないんじゃないか?」と思うと俄然シティーハンターを見たくてたまらなくなり、この時のオッサンのことを心に秘めながら、昨日は劇場版シティーハンターを見に行った。

 

きっとこのオッサンも劇場版を見に行くんだろうな……オッサン、劇場版シティーハンター見た方がいいぜ……。

 

ちなみにその時のオッサンの話とテンションはどんどんエスカレートしていった。

 

「女の人ってあんまりマンガ読まないよね。そう、俺も付き合った人みんなに言うんだけどさ……俺は冴羽獠なんだよ! だから俺という人間を理解するにはシティーハンターを読めばいいんだ! 簡単でしょ? シティーハンターを読むだけで俺の性格が分かるんだよ? 性格の8割くらいは冴羽獠だからね。だったら読むしかないでしょ! でも女の人ってなぜか読まないんだよね」

 

付き合ったら「俺のことが知りたかったらシティーハンターを読め!」って言ってくる男って最悪なのでは? と思いつつ、この人は本当にシティーハンター好きなんだなぁと考えていた。

 

次の瞬間、友人が勢いよく立ち上がり、テーブルを思いっきり蹴ってグラスが倒れた(マジでこういう酔い方する奴は最悪だ)。僕が店員に平謝りし、モップを持ってきてもらう間もオッサンは冴羽獠について語り続ける。

 

「冴羽獠はさぁ……本当に惚れた女には、香のことだけど、素直になれないんだよ。でも他の女の子にはあんなスケベな感じでしょ? そのギャップがいいんだよ。その対応の違いが彼の愛情なの。だから俺も本当に好きになった人、いまの奥さんだけど、奥さんには絶対デレデレしないね。冴羽獠は香にデレデレしないから、俺もデレデレしない

 

知らねぇよ

 

この時はそう思ったが、映画を見た後だと「なるほど」と思える。

 

冴羽獠、全然デレデレしない。

 

「今まで付き合った人には『なんでかまってくれないの? 私のこと飽きたの?』とか散々言われてきた。違うんだ! ちゃんと好きなんだ! それが俺の愛情表現なんだよ! でもそれが愛情表現だってことを女に説明しちゃダメなんだ。だって冴羽獠はそんなことしないから

 

このオッサンひょっとして呪われてるんじゃないか? だんだん聞いている方が恥ずかしくなってきた。

 

バカな友人が「俺はまだまだイケる!」といって酒を追加しようとするので「もう止めておけ」と制する。

 

もう今夜はやめて、奥さんが待つ家に帰った方がいい、今日の醜態を思い出して死にたくなるのは自分なのだから

 

「だから俺はいつも言うんだ! 俺のことが知りたかったらシティーハンターを読んでくれって! なんなら、俺のを全部貸してあげるからって! そうすれば俺という人間が理解できるんだよ、だって俺は8割くらい冴羽獠なんだもん。俺はね、俺はヒントをいつも与えてるんだ、俺は冴羽獠なんだよとね……。それでもなぜか女はいつもシティーハンターを読まないんだ!!

 

「奥さんは? 奥さんは読んだの?」

 

「いや、奥さんも結局読んでないんだよ!!」

 

 

「じゃあきっと、あなたの2割のところを愛してるのよ」

 

 

シャーン !!

テンテンテン テレーレーレレン

テレレンレン テレレンレン テレーレーレレン

 

テンテンテン テレーレーレレン

テレレンレン テレレンレン テレーレーレレン

 

ジャンジャンジャカジャ ジャンジャンジャンジャン

ジャンジャンジャカジャ ジャンジャンジャンジャン

 

ジャンジャンジャカジャ ジャンジャンジャンジャン

ジャンジャンジャカジャ ジャンジャンジャンジャン(デンデンデンデン)

 

ジャンジャンジャカジャ ジャンジャンジャンジャン

ジャンジャンジャカジャ ジャンジャンジャンジャン

 

ジャンジャンジャカジャ ジャンジャンジャンジャン

ジャンジャンジャカジャ ジャンジャンジャンジャン(デンデンデンデン)

 

アスファルト タイヤヲキリツケナガラ~