魚の感想

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成人式後の同窓会には行くべきだ

こんばんは、まだイマイチ大人になりきれていない魚の精巣です。

 

このブログが新成人の目に触れることはないかもしれませんが、成人式後の同窓会には行くべきだということを、僕は思い出話と共に主張したい。

 

 

「同窓会参加しますか?」

あれは5年前の夏になるのだろうか。成人式の日付と一緒にFacebookのメッセージでそう聞かれた僕は最初に「めんどくさいなぁ……」と思ってしまった。

 

送り主は中学の同級生で、苦手なタイプの男だった。中学時代のその男は、いつもうるさい仲間とつるんで、他人を小馬鹿にする笑いの技術に長け、付き合った女の数で人の優劣を決めていた。

 

そんなヤツが開く同窓会に行ったところで楽しめるわけがないし、自分と仲が良かった友達も行くはずがない。そう考えた僕は「バイトに入ると思うので不参加でお願いします」などと返信して、半年後の同窓会を断った。

 

そう、僕は知らなかったのだ。成人式は同窓会までが1セットということに。

なぜなら誰も教えてくれなかったからである……。

 

どのコミュニティにも属せない

はっきり言って、僕の成人式は失敗だった。

 

まず会場に一人で行ってしまった。これは大きな失敗である。

 

成人式というのは友達同士で集まって会場までワイワイやりながら行くものなのだ。そうすることで混雑した会場に着いてからも同じコミュニティ内で集団行動がとれる。

 

最初のコミュニティを基本として、そこから別のコミュニティにいる友人のところへ挨拶をしに行ったり、女子グループのコミュニティに絡んでいったりするのである。

 

その最初のコミュニティへの参加に失敗してしまった僕は、会場に着いてからもずっと独りだった。

 

人ごみの中を掻き分けて知り合いの顔を見つけたと思ったら、その知り合いは自分の知らない人とコミュニティを作っている。

声をかけても

「おう、なにしてんの?」

「いや……ちょっとね」

「そっか、んじゃまたな!」

その繰り返し。

 

どこに行っても必ずいる友達の友達。

どこにも居場所がない。

誰にも絡めない。

誰も相手してくれない。

 

中学時代の友人に目星をつけて連絡してもスマホは震えず、人ごみから逃れて駐車場で震えていた。

 

フォルダに残ったのは遠目から大量の人を撮った数枚の写真だけ、そんな成人式。

 

どうして成人式に一人で行くと孤独になると知らなかったのか。

なぜなら誰も教えてくれなかったからである……。

あと、誰も誘ってくれなかったからである……。

 

 僕だけがいない一次会

成人式が終わり、スマホが震えた。

 

スマホの向こうの相手は昔行っていた塾の同期で、恒例行事として成人式後にみんなで塾に挨拶へ行くらしく、その誘いだった。

 

ようやく所属できるコミュニティを見つけた僕は意気揚々と参加し、挨拶を手早く済ませたのだが、その時に

「おまえ、なんで同窓会参加しないの?」

と言われ、ようやく自分の置かれた状況を知ったのである。

 

よほどの理由がある人を除いて、同窓会に出席しないのは僕だけだった。

 

今日の同窓会はただの仲良しグループの集まりではない。学年単位で呼びかけられているのだ。

よく一緒に遊んだマブダチも、

部活のメンバーも、

可愛いかったあの子も、

自分より根暗なあいつも、

喋ったことすらない女も、

みんなみんな参加するのだ。逆になぜおまえは来ないのだ?

 

そんなことをいまさら言われても困る。ただ面倒くさかったから適当にウソをついて拒否しただけなのに……。

 

そんなに大規模だったということをどうして誰も教えてくれなかったんだ。どうして半年間もあったのに誰も教えるどころか話にすら上がらなかった。

 

そうか、俺が誰とも自分から連絡を取っていないせいか、俺は……俺は……。

 

なるべくして、孤独になっていっている。

 

たまらず仲の良かった”M”に連絡を取った。

「いまから一次会は参加できないからあきらめる。でも、二次会があればその時はコッソリ呼んでくれ!」

 

そうして僕は、みんなが一次会へ行っている間、自室で孤独にゲームをしてMからの連絡を待った。

 

母親が僕に

「あんた、同窓会とかないの?」

と聞いてきたので

「まだ始まってないよ」

と答えてしまい、ひどく惨めな気持ちになった。

 

成人式の後は同窓会へ行くのが普通だと母親でさえ知っていた。

なぜ教えてくれなかったのか……。

 

「こいつらはダメだ。逃げよう」

 21時を過ぎて母親がさすがに怪しんできたころ、やっとMから連絡があった。

「一次会は終わったが、正直あまりいいものじゃないよ。それでもいいなら来るか?」

「行く! どこ!?」

 

僕はもう孤独に耐えられなかった。待っている間に、リアルタイムで更新されるFacebookのタイムラインを覗いてしまったからだ。

 

Facebookには一次会の会場になっているホテルのホールで、スーツやドレスコードに身を包んだかつての同級生が楽しげに記念撮影をしている写真がバンバン上がってきていた。

 

その写真たちのなかにはMもいたし、ほかの仲の良かった友達もいた。東京に進学してなかなか帰ってこれなかった友人もいたし、当時から色気のあった女の子はさらにエロくなっていた。

 

当たり前だが、その写真のどれにも自分はいない。

”自分はこの場にいない”という事実が、負け組であることを物語っている気がした。

 

これからの人生、ことあるごとに卒業写真の右上に丸窓で出される人のように笑われるのだろう。

「同窓会の時あいつはいなかったよね」

「なんで?」

「さぁ、友達がいないから誘われなかったんじゃない?」

なんてことを言われるのだ。

 

同窓会にいなかったことが、友達のいない奴であることの証明であるような気がした。

 

そんなことはない! 俺にも友達がいる! Mも、みんなも、あの子も、本当は俺がいなくて物足りないはずなんだ! ……たぶん。

 

僕はMから教わった二次会会場へ急いだ。ちょうど同窓会の一行が会場へ入り切ろうとしているとき、Mと合流し、

さぁ! 待たせたな!

と乗り込もうとしたとき、Mが言ってきた。

 

「こいつらはダメだ。逃げよう」

 

Mは一次会で”何か”を見たのだ。二次会には参加せず、二人だけで飲みなおそうと提案してきた。

それにしても、なんてロックなセリフか。

 

今まさに始まろうとしている二次会の入り口でひたすら入店拒否するM。

僕はイマイチ状況が呑み込めずうろたえていると、ドレスコードの女の子たちと中学時代より数倍チャラくなっていた幹事の男が僕を見て

「あれ? ○○いるじゃん」

「ホントだ。なんでいるの?」

と言ってきたので耐えられなくなって逃げてしまった。

 

本当は分かっていた。二次会からコッソリ参加なんてできないことに。

教えられなくても分かっていたんだ……。

 

「これが成人なのかよ」

僕とMは会場から逃げ出して、安い居酒屋に入った。

 

Mは一次会でひどいものを見ていた。

 

チャラ男どもは一升瓶をイッキ飲みし、

すこしでも隙を見せた男は酒をたらふく飲まされ、

男が集まれば女の吟味がはじまり、

めぼしい女を壇上にあげて性体験を話させていたという。

 

そこはまさにセクハラとアルハラが横行する酒池肉林。

乱痴気騒ぎの果てにMは得るものは何も無いと悟り、男と女がワンナイトラブへと交差していく群雄割拠の二次会会場への道を自らの意思で降りたとのことである。

 

Mは抜け出すチャンスを探し、僕がやってくるのを心待ちにしていたという。

「あそこはお前には合わない。行っても無理やり酒を吐くまで飲まされて終わりだよ。俺と一緒に抜け出して正解さ」

 

Mの話を聞いた限りでは確かにそうだった。Mの見たものはもはや同窓会ではない、俗に言う”地獄”である。

 

しかし、このときは「それでも行きたかった」というのが僕の正直な気持ちだった。

 

それほどまでに、朝の成人式から続く孤独が強かったのである。

 

ひと通りMの話を聞いた後は、当時ハマりたてだったアイマスの話などをして楽しく飲んだ。理想としていた同窓会ではなかったが、それでも孤独から解放されて僕は満足した。

 

店を出て、Mと二人で歩いていると、反対側の歩道に中学の同級生の男女2人を見つけた。二次会の終わりと被ったのだ。

 

その2人の雰囲気はホテル街へ向けて歩いていたが、途中で女が気分を悪くしたようでしゃがみ込んだ。

 

男は全く動けなくなってしまった女の腕を引っ張ったり、持ち上げて無理やり立たせようとしていたが上手くいかず、言うことを聞かない大型犬の散歩をしている人のようになっていた。

 

僕とMは道の反対側からしばらく様子を見ていたが、ほどなくしてMは

「これが成人なのかよ」

と言った。なんてロックなセリフか。

 

 

あれから4年。結局いまでも成人式と同窓会を後悔している。できることならもう一度成人式があってほしいが、もう成人式は二度と来ない。

 

 

新成人の方々にはどうか後悔のないように、成人式後の同窓会は是非とも楽しんでほしい。

 

同窓会には行くべきだ。たとえそれが地獄の入り口だとしても、インスタに貼られまくる同級生の写真に耐えられる自信が無いのならば。

 

でも多分、これは憶測なのだが、というか負け惜しみなのだが、同窓会に行っても大人になる方法は分からないと思う。

 

なぜなら誰も教えてくれないからである……。

おそらく誰も知らないのである……。